クリエイティビティを祖業とする博報堂DYグループで、論理と感性を交差させる仕事ができる。社会人4年目、入社10カ月の新鋭コンサルタントが語るENND Partnersという場所。
「産業をつくる」「産業を再編する」ことに関心をもっていたので、2024年12月までは財務系のコンサルティングファームでM&A領域の業務にかかわっていました。
M&Aで何ができるのか、どう活用すれば組織にとってプラスになるのか。その可能性について考えてきた背景には、私の祖父が製造業の会社を経営していたことも関係があります。
祖父の会社では、代々伝統工芸品をつくっていましたが、継ぎ手がなく廃業したのです。いくら美しいプロダクトやサービスがあっても、市場が目を向けてくれなければ絶えてしまう。そういう現実に触れたことは、経済合理性と組織の、あるいはそこで生まれた文化の継承との両立が容易でないことを知る契機になりました。
大学で会計やファイナンスを専攻したことも、この仕事を選んだことも、私自身の起点がそこにあり、原体験だったのだと思います。
この時代のコンサルタントに求められること
前職でM&Aに実際にかかわって感じたことがあります。企業が育んだ文化の継承は、M&Aという手法だけでは果たせないのではないか―。これはM&A実行の前の、買収企業の選定や、その後、企業をどう統合・再編・融合させていくかという段階にかかわって得た実感です。M&Aがうまくいった企業は数値的シナジーだけでなく、その組織にとって社員や文化とは何かをよく考えているように映りました。M&Aの本当の価値はそこにあるのでは、と課題を与えられた思いでした。
私が社会人として働き始めて経験を積んだこの3~4年は、生成AIの高度化による環境の変化を強く感じた時期でもあります。クライアントが自らAIを使うことで、これまでコンサルタントが担ってきた業務を一定程度内製できるようになりました。
論理的思考や情報収集を行わせたとき、AIは人より優れた面を見せ始めています。ならばコンサルタントは、組織の意思決定の質や文化的価値を高める、あるいはクリエイティビティを用いてサービスやプロダクトの価値を高めることを求められるのではないか―そう考える機会が増えていったんです。ENND Partnersを知ったのはちょうどそういう時期でした。
ENND Partnersに惹かれたふたつの理由
ENND Partnersは2024年3月設立のまだ新しいファームでしたが「人間中心のコンサルティング」を掲げているところに目が留まりました。そのことは採用面談でお話しした3人のメンバーとの会話からも伝わってきました。アート、ファッション、ものづくりといったカルチャー全般、あるいはヒューマニズムへの関心といった話題で、各1時間ほどの面談が盛り上がったんです。デザインシンキングを単にツールとして使っていない、それは私がこの会社を選んだ大きな理由になりました。
もうひとつ惹かれた要素は、博報堂DYグループであったことです。クリエイティビティを祖業として100年以上サービスを提供してきた会社が軸にある。ENND Partnersはそこに、業務や戦略コンサルとも異なる人間中心のコンサルティングを掲げていました。ロジカルシンキングとデザインシンキングの融合だけでない、クリエイティビティを専業にしてきた人とも協働できる、そういう期待感が膨らんだのです。
人文書に親しむ人たち
経済的合理性と文化という茫漠としたもの、どちらも重視する発想は少し特異に映りました。いったいそれは何だろうと思ったのですが、働きはじめてわかったのは、皆さんとても本を読まれている、ということ。二つの相反するものが自然と融合する発想の源泉はそこにあるかもしれません。仕事柄、ロジカルなビジネス書を愛読するイメージが浮かびますが、実は人文書を読まれている方が多かったんですよね。
私が好きな一冊に『石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか』があります。石岡さんはグラフィックデザイナーとして時代を代表する広告を生み出しただけでなく、生涯を通して女性の権利向上やエンパワーメントに従事された方ですが、押し付けることなく人の思考を―もっと大きく見るなら社会を変えることもできる高度なコミュニケーションについて教わった気がします。
ロジカルシンキングとデザインシンキング、そこにクリエイティビティも融合させる。それはテクノロジーがまだ到達できない領域だと思います。「ヒトが生み出すもの」の尊さについて、その感性を備えている方がENND Partnersには多いと感じます。一見、無関係なヒューマニズムが補強材以上に意味をもち、ファイナンスや戦略的な知識以外の人間性がコンサルタントには不可欠であることに気づいている、ということでしょうか。
意思とは生き続けるための強さでもある
組織や経営者といったクライアントの、中長期的に利益を出すためのサポートはひとりで行うわけではありません。今進めている新規事業組成の仕事も博報堂のクリエイターやコピーライター、ビジネスデザイン職の方、そしてkyuグループの方と複数メンバーで協働しています。
皆それぞれ、どうすればクライアントの価値が高まるか、その思いで臨んでいることは課題との向き合い方から伝わってきます。
ただ、成果や答えを短期間で出すことの難しさ、もどかしさはクライアントワークに従事するなかで常に感じることです。
『知識創造企業』(野中郁次郎ほか)には、個々人のなかに存在する「暗黙知」を「形式知」へすくい上げることで組織を変えるマネジメントについて書かれています。その“何かを変えたい”という熱のなかにある暗黙知を探りあてて、合意形成に達したときのやりがいは大きいですよね。
コンサルタントは、もどかしさというストレスと対峙しながら、やがて答えへとたどり着く、ネガティブ・ケイパビリティとグリット、ふたつの力が求められると思っています。
少し話が逸れるかもしれませんが、『夜と霧』(ヴィクトール・フランクル)の「なぜ生きるかを知っている者は、どのように生きることにも耐える」というニーチェの言葉を引いた部分がすごく好きなんです。これは個人だけでなく組織の在り方にも通じるのではないか、と。意思とは、人が、組織が生き続けるための強さでもある、そう教わった気がするのです。
体温が1℃上がるようなサポート
社会人4年目なので中堅一歩手前、という立場になりますが、長いキャリアをもたれているクライアントの方々とお仕事をさせていただいています。利益を出して組織も良くしていく。そういうアジェンダに取り組む責任の重さは感じますが、お話ししたようにひとりでそれを背負うわけではありません。クライアントである組織で働く人から「これいいじゃん!」と共感をいただいたり、体温が1℃上がるようなサポートができたらうれしいですね。
二項対立から融合を導き出し、クライアントの価値を高めたい、そう思っている方と一緒にお仕事をしたいと思っています。不安定で不確実な状況でも前向きに、新しい挑戦を恐れない気持ちがある、そんな人とENND Partnersで出会えることを楽しみにしています。
ENND PARTNERS
https://enndpartners.com/
たけうち・みずき◎ENND Partners コンサルタント。一橋大学大学院経営管理研究科経営分析コース修了後、財務アドバイザリーファームにてテクノロジー・メディア・エンターテインメント領域のクライアントを対象に、M&A戦略立案やビジネス・デューデリジェンスに従事。2025年1月よりENND Partnersに参画。プライベートでは途上国支援を目的とする非営利団体でプロボノ活動に携わる。



