広告に次ぐ第2の収益源、AI学習用データライセンス事業の開始
現在、レディットの広告に次ぐ第2の収益源は、AIモデルの学習データとして外部にコンテンツをライセンス提供する事業だ。かつて同社は、開発者がサイト上のデータにアクセスできるAPIを無料で公開していたが、2023年から有料化に転換した。現在は外部の無許可のボットによる自動巡回を防ぐ仕組みを導入しており、許可なくデータを収集したとして、検索エンジンのPerplexity(パープレキシティ)を含む複数のAI企業を提訴している。
ごく少数の企業が、レディットのデータ利用に対して正式な対価を支払っている。ハフマンは昨年、グーグルおよびOpenAIとライセンス契約を締結し、それぞれ6000万ドル(約92億円)と7000万ドル(約108億円)の契約金を得たと報じられた。レディットに蓄積された膨大なリアルタイムの人間が生成したコンテンツは、AI企業にとって極めて価値が高い。AI分析プラットフォームのProfoundによれば、2024年8月から2025年6月の期間で、レディットはグーグルの「AI Overview」で最も多く引用された情報源となり、ChatGPTでも2番目に多く参照されたという。
契約金は約92億円、AI企業のインフラ投資(約13.9兆円)に比べ安すぎるとの声
レディットがAIモデルの中核的な情報源になっていることを踏まえれば、これらの契約金はむしろ低すぎると見る向きもある。グーグルが支払った6000万ドル(約92億円)は、時価総額が3.4兆ドル(約523.6兆円)の親会社アルファベットが今年AIインフラ整備に投じる予定の900億ドル(約13.9兆円)超のわずか0.07%にすぎない。
「この価格水準は一種の最低ラインを示唆している。レディットが交渉力を高め、同社のコンテンツの価値がAIモデルにとっていかに重要かが明確になれば、次の契約はこれより高い金額になるだろう」と、投資銀行ベアードのシニアリサーチアナリスト、コリン・セバスチャンは指摘した。
“検索の第一選択”を狙う機能「Reddit Answers」を実装
もっとも、AIチャットボットへのデータ提供が、レディット自身の存在価値を損なうリスクもある。そうした懸念への“保険”として、ハフマンは昨年12月に生成AIを活用した検索機能「Reddit Answers(レディット・アンサーズ)」を立ち上げた。彼はその後、投資家に対して「このプラットフォームを“検索の第一選択”にしたい」と語っていた。
Reddit Answersで検索を行うと、元コメントへのリンク付きのユーザーの投稿から抜粋されたレコメンド内容を、AIが整理して一覧表示する仕組みになっている。
AI企業と“本物の人間が生成するコンテンツ”の関係
ハフマンは、AIの台頭によってグーグル検索経由のレディットへのトラフィックが影響を受ける局面があると認めている。それでも彼は、会社の将来に自信を持ち続けている。ベアードのコリン・セバスチャンはこう分析する。
「レディットが“綱渡りのバランス”を保てている理由のひとつは、言語モデルの側もレディットの存続を望んでいることにあると私は考えている。実際問題として、AIモデルは常に“本物の人間が生成したコンテンツ”を必要としている。そうした素材は簡単には見つからないし、合成データだけでは補えない。だからグーグルやOpenAIにとっても、ユーザーが活発に利用する健全なプラットフォームであるレディットを維持することに、ある種“逆説的なインセンティブ”が働いている」。
CEO自ら利用を継続、AMAセッションやコメントで対話を維持
ハフマンはレディット上での利用体験を自ら確かめるため、自身でもかなりの時間をこのプラットフォームで過ごしている。これまでの投稿やコメントは1000件を超え、「Ask Me Anything」(編注:日本の「●●だけど質問ある?」に該当)セッションもたびたび開催してきた。彼の決算発表前の最後の投稿は10月3日のもので、上場時に117株を購入したユーザーが「株価が500%以上も上がった」と喜びのコメントを投稿したのに対し、笑顔の絵文字で返信していた。


