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2025.11.06 12:30

共同創業から20年、米掲示板「レディット」CEOがついにビリオネアに

Redditの共同創業者でCEOのスティーブ・ハフマン(Photo by Spencer Platt/Getty Images)

匿名性を保ち広告を最適化、広告収入は約845億円

ハフマンと彼のチームは、当初から広告をレディットにとって最も現実的な収益化手段と位置づけていた。その背景には、広告収入によってプラットフォームを無料で提供し続けられるという考えがあった。モーニングスターのアナリスト、マリク・アーメド・カーンは「ハフマンはレディットの広告事業をゼロから築き上げた」と述べている。

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レディットにとっての課題の1つは、ユーザーの匿名性という根幹を損なうことなく、ブランドが効果的に広告をターゲティングできるよう支援することだった。メタやグーグルのように、年齢・性別などの個人のデモグラフィックデータ、ネット全体での行動追跡をもとに広告をパーソナライズできるプラットフォームとは異なり、レディットでは広告主がコンテキストを手がかりにする必要がある。たとえば、ユーザーが育児関連のサブレディットに参加したり、妊娠に関する投稿にアップボート(好評価)したりすれば、ベビー用品の広告を目にする可能性が高くなるといった具合だ。

今のところ、この仕組みはうまく機能している。直近の四半期の広告収入は5億4900万ドル(約845億円)に達し、レディット全体の売上の94%を占めた。2015年にハフマンがCEOに復帰した当時、同社の売上はわずか1200万〜1500万ドル(約18億5000万円〜23億円)程度にすぎなかった。

新たな課題にも直面

もっとも、新たな課題も待ち受けている。レディットはいま、AIモデルの学習にユーザーデータを使うことに関する倫理的な問題、言論の自由とコンテンツ管理のバランス、さらには動画中心へと移行しつつあるオンライン文化の中でテキストベースのコンテンツがどこまで通用するのかといった、現代の最も議論を呼ぶテーマに直面している。

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それでもハフマンは動じていないようだ。「どんな事柄であったとしても、レディットのどこかには、すでに同じことを経験し、それを共有した人がいる。このプラットフォームが最も誇れるのは、そこにあるコンテンツだ」と彼は30日に語った。

ハフマンの生い立ち、レディット創業とCEO復帰の経緯

首都ワシントン近郊のバージニア州の小さな町で育ったハフマンは、成長過程で両親の離婚に直面した。彼はかつて「いつか必ず自分で会社を立ち上げ、経営することになると思っていた」と語っていたが、その背景には、GMでエンジニアを務めていた実父の “突拍子もない発想力”と、ユニシスの最高マーケティング責任者だった継父の“金融センス”の両方があったという。

幼い頃からプログラミングを覚え、それを活かしてバージニア大学でコンピューターサイエンスを専攻した。在学中にアレクシス・オハニアンと出会い、卒業までには「いつか一緒に会社を興そう」と決めていた。あとはアイデアだけが欠けていた。

21歳のころ、レディットを立ち上げ

ハフマンの最初のアイデアは、携帯電話から食事を注文できるソフトウェアを作るというものだった。今では当たり前のように聞こえるが、これはスマートフォンのアプリが一般化する前の話だ。当時設立されたばかりのスタートアップ支援組織Yコンビネータは、彼のこの「マイ・モバイル・メニュー(My Mobile Menu)」という企画を採択しなかった。しかし共同創業者のポール・グレアムは2人の才能を高く評価し、別のアイデアで再挑戦するよう勧めた。2回目の応募で採択され、1万2000ドル(約185万円)の出資を受けた2人は、卒業直後にレディットを立ち上げた。ハフマンが21歳のときだった。

その後、サイトのユーザー数は雪だるま式に増加し、ハフマンたちは1日16時間働く日々を送った。そして最終的に、同社はコンデナストに売却された。ハフマンは2009年まで暫定CEOとして残ったのち、旅行検索エンジン「Hipmunk(ヒップマンク)」を共同創業し、2016年にConcur(コンカー)に非公開額で売却した。このサービスは、2020年に終了した。

一方その頃、コンデナストはレディットを再び分離し、将来OpenAIの共同創業者となるサム・アルトマンなど外部投資家から資金を調達していた。しかし、事業の収益化に苦戦していたため、再びハフマンが呼び戻されることになった。

モバイルアプリの開発や多言語対応などに取り組み、日次利用は1億1600万人へ

ハフマンは広告収入の拡大に加え、サイトの全面リニューアル、モバイルアプリの開発にも着手した。彼が復帰した当時、レディットの日次アクティブユーザーは1200万人ほどだったが、現在は1億1600万人にまで増加している。レディットはもともと米国内中心のサービスだったが、最近では30言語に対応した翻訳機能を導入し、ユーザーが母語以外でも簡単に投稿・閲覧ができるようにした。その結果、過去1年で海外ユーザーの日次アクティブ数は31%増加している。

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翻訳=上田裕資

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