欧州

2025.11.06 10:00

中国製無人機から脱却するウクライナ 部品も自国調達へ

ウクライナ東部ドネツィク州で、無人機(ドローン)を準備する女性兵士。2024年5月31日撮影(Viktor Fridshon/Global Images Ukraine via Getty Images)

ウクライナ東部ドネツィク州で、無人機(ドローン)を準備する女性兵士。2024年5月31日撮影(Viktor Fridshon/Global Images Ukraine via Getty Images)

ウクライナは無人機(ドローン)の開発と製造に長けている。数百万機の小型一人称視点(FPV)無人機が戦場で戦車から歩兵まであらゆる標的を狙い撃つ一方、海上自律警備無人機(MAGURA)がロシア海軍を恐怖に陥れ、長距離攻撃無人機がロシア国内の石油精製施設を焼き払っている。

だが、ある種の無人機の製造は、ウクライナにとって長年の難題だった。それはごくありふれたクアッドコプター(訳注:民生用の小型無人機で一般的な4個の回転翼を持つヘリコプター)であり、今もなお中国のメーカーDJIから大量に調達している。

ウクライナはついに国産代替品の大量配備を開始した。同国の無人機政策を担当するミハイロ・フェドロウ副首相によると、最初の1000台が前線に配備されたという。

では、なぜこの種の無人機を複製することがこれほど困難で重要なのだろうか?

世界標準となった中国製無人機「マビク」

中国広東省深センに本拠を置くDJIは、2013年に初の無人機を発売して以来、民生用クアッドコプター市場を席巻してきた。同社が展開するクアッドコプター「マビク」は世界標準となっている。マビクは折りたたむとカーゴポケットに収まるほど小型化できるが、飛行時間は45分以上、飛行距離は少なくとも8キロに達する。同無人機が優れている点は、障害物回避や自動追尾、帰還機能など人工知能(AI)支援による飛行性能と高品質なカメラを備えながら、価格が2000ドル(約30万円)に満たないことだ。2010年代にDJIが急速に台頭したことで、ティール、スカイディオ、3Dロボティクスといった米国のクアッドコプターメーカーは、事実上すべて消費者市場からの撤退を余儀なくされた。

小型クアッドコプターは、ウクライナでは必須の装備品だ。空中の携帯型監視装置は貴重な情報を提供し、ロシア軍の所在を特定して追跡し、砲撃を誘導するとともに、歩兵が敵を先に見つけて攻撃することを可能にする。さらに手りゅう弾やその他の即席弾薬を投下することもできる。

マビクは、小型クアッドコプターの総称となった。ロシア軍もこれに追随し、マビクを大規模に配備している。両軍とも、兵士たちは無人機を自ら購入するか、軍事調達システムを通じて支援者から受け取っている。

米軍事アナリストのサミュエル・ベンデットは先週、X(旧ツイッター)に、ロシア軍が依然としてDJI製マビクに大きく依存しており、民間による資金調達活動が絶え間なく続いていると投稿した。あるロシアの資金調達担当者は「これらの無人機なしに戦闘に臨むことは、不必要な損失を自ら招くことだ」と述べた。

ウクライナは自国でFPVクアッドコプターを組み立てているが、より高度なマビクを複製するのは難しい。ある無人機の専門家は筆者の取材でこう語った。「DJIは数十億ドルの研究開発費を投じ、中国トップクラスの人材を確保し、15年も先行している。マビクに匹敵する代替品を生み出すことは不可能だ」

だが、ウクライナ側には無人機を自国製造する動機が十分にある。DJIは自社製品は戦争用ではないと主張し、ウクライナへの輸出を禁止したため、第三者経由で無人機を入手する必要がある。次に、安全性の問題がある。米国防総省は、製造元へデータを送信するDJI製無人機の使用を一切禁止している。DJIはセキュリティー機能を追加し、ウクライナを含む「地理的禁止」区域では、大規模なハッキングなしに最新モデルを飛行させることを不可能にした。さらに、自国で無人機を製造することは、今後の重要な戦略的能力になるとみられている。

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翻訳・編集=安藤清香

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