もっとも「ベッセントが日本政府に対して日銀に政策余地を与えるよう促しても、日銀が今週(10月30日)の会合での据え置き方針を変更する公算は小さい」とブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、木村太郎は予想していた。「(日銀にとって)米国からの控えめな圧力は、(2024年7月の利上げ後のように)世界市場を再び動揺させることへの懸念に比べれば取るに足りないものだ」
キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、ヨナス・ゴルターマンは中間的な立場で、「最終的にはベッセントの主張が通り、米国と日本の金融政策の差が徐々に縮まるにつれて円は反発する」との見方を示している。
米国の立場は、日本の高市早苗新首相の立場と対立するものだ。彼女は、日銀が金利を据え置くか引き下げることを望んでいるようだ。高市はトランプと友好的な関係を築くことに腐心しているが、その間もトランプによる日本経済への打撃は続いている。
ムーディーズ・アナリティクスのエコノミスト、ステファン・アングリックは「日本の製造業者はあらゆる方向から締め付けられている」と指摘している。「日米貿易合意のもとで引き上げられた米国の輸入関税が、輸出に打撃を与えている。これにより、日本のGDP(国内総生産)は少なくとも0.5%押し下げられるとみている」
アングリックは、トランプとアジアの貿易相手国の間で最近行われた協議によって明確になった面もあるものの、「全体として貿易の見通しは依然としてリスクに満ちている」と警鐘を鳴らす。日本については、東京都区部の10月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比2.8%上昇と、公共料金補助の終了などの影響で9月(2.5%上昇)から加速したことに言及しつつ、「消費者は根強いインフレによって圧迫されている」と説明している。
日本では「内需主導の物価上昇圧力は引き続き乏しく、製造業者によるコスト削減を背景に賃金の伸びも鈍る可能性が高い」とアングリックは結論づけている。「わたしたちは、日本銀行は2026年1月まで金利を据え置くと予想しているが、円安がさらに進めば12月に利上げに踏み切る可能性もある」
だが、そうならない可能性もある。トランプが関税政策を放棄する可能性は、日銀が近いうちに金利を引き上げる可能性よりもさらに低い。ホワイトハウスが世界経済に新たな逆風を送り続けるなか、日銀の金利正常化に向けた計画はリアルタイムで狂いつつあるのかもしれない。


