日本企業が抱える課題
しかし、これほどのIPビジネスバブルがありながら、日本企業のなかには中国から撤退する事例も少なくないという。日本発IPが使われても、日本企業がこの市場で直接商売をしていくとなるとハードルが高いことも多い。BWにカフェを出店していた、集英社とバンダイナムコホールディングス、ベネリックの合弁会社、集英万夢実業の阿相道広総経理にも話を聞くことができた。
同社は19年設立後、ECだけでは市場に入り込めず21年12月から「SHONEN JUMP SHOP」という実店舗を展開してきた。ゼロコロナ期の22年に強烈なダウントレンドを味わいながら、23-24年に急回復、バブルともいえる中国IP市場とともに成長してきた会社だ。だが“熱しやすく冷めやすい”のが中国市場。昨年のBWあたりをピークに実店舗でのグッズ販売は半減。競争過熱でグッズが市場にあふれすぎたという。「売れるとなれば一気にくるが、売れないとなれば一気に引いてしまう。IPを育てるという発想を一緒にもってくれる事業者は少ない」。ならばこそと、自社で運営するSHONEN JUMP SHOPはブランディングの旗艦店としてデザイン性を高め、カフェも併設した体験空間としての価値を高めていくという。
日本とは比較にならないスピードで乱高下を繰り返す中国のIPビジネス市場、その波を乗りこなすために日本企業が身につけるべきものはまだまだ山積みだ。
なかやま・あつお◎エンタメ社会学者。東京大学大学院修了。リクルートなどを経てバンダイナムコスタジオ、ブシロードで、メディアミックスIPプロジェクトを推進し独立。Re entertainment代表取締役。


