日本人はウナギが大好きだ。好きで好きでたまらない。それなのに保護には無関心という、きわめて残念な報告がなされた。過去30年間の新聞報道を分析したところ、日本人のウナギに対する関心の偏りが明らかになった。
中央大学、東北大学、慶應義塾大学による共同研究グループは、国際自然保護連合(IUCN)による絶滅危惧種の指定やワシントン条約による取引制限の記事が日本社会に与えた影響を調べる目的で、日本で刊行されている4つの主要全国紙(朝日新聞、毎日新聞、日本経済新聞、読売新聞)に、1992年から2021年の30年間に掲載されたウナギ関連の記事を分析した。記事の内容は、食、産地偽装、資源、養殖、漁業、貿易の6つのカテゴリーに分類し、それぞれの年ごとの本数を数えた。また、ウナギの種類による分類も行っている。
ウナギに関する記事は全部で8387本あった。年間で最大数となったカテゴリーは、2008年の「産地偽装」で、ウナギ関連の記事数が977本に達した。ところが同年、IUCNが、当時日本が大量消費していたヨーロッパウナギを絶滅危惧種に区分したことを報じる記事は見あたらなかった。

また2014年、ニホンウナギがIUCNの絶滅危惧種に区分されたときは、前年に環境省がニホンウナギを国内レッドリストに加えたこともあり、「資源」、「漁業」、「貿易」の記事が増えた。それによりウナギの保全に関する言及が増えたものの効果は一時的で、2020年にIUCNの見直しが行われ、ニホンウナギが引き続き絶滅危惧種の区分となったときは、記事数はほとんど増えなかった。
全体を通じて圧倒的に多いのは「食」だ。また食につながる貿易に関する記事も多いことから、日本の新聞は、食や貿易といった「生活や経済に直結するテーマを中心に報じる傾向が強く、国際的な保全評価そのものが、長期的な報道や世論形成に結びつく力は限定的」と研究グループは分析した。

このように、ウナギを食べることにのみ関心が強い日本で継続的な保全の意識を高めるには、専門家による情報発信、消費者教育、国際協力による制度設計などの取り組みが必要だと研究グループは指摘する。
読まれない記事は書かないと言われればそれまでだが、世論形成は報道機関の重要な役割のひとつだ。その力が限定的と言われてしまっては大新聞も形無しだ。私たちも、絶滅危惧種に舌鼓を打っているという現実をしっかり自覚したい。



