混沌の時代を照らす「文化」の底力。多様なカルチャープレナーたちの挑戦

「カルチャープレナー」とは「文化起業家」のこと。文化やクリエイティブ領域で 新ビジネスを展開し、豊かな世界を実現しようとする人たちだ。

Forbes JAPANでは、今、日本各地で誕生しているそんな新しい起業家にフォーカスした特集を2023年に立ち上げ、3回目となる今年も2025年11月号で展開した。

今回からプロデューサーやコネクターも加わり、さらに多彩な顔ぶれが揃った。改めて、カルチャープレナー30の選出基準やムーブメントの広がりについて紹介する。


文化を軸に革新的なビジネスを展開する「カルチャープレナー」たち。文化と経済活動を両立させ、新たな価値を生み出そうとする日本の文化起業家たちにフォーカスした特集は、今回で3回目となる。

Forbes JAPANはこれまでに、60人のカルチャープレナーたちを選出してきた。そのなかには、茶人の精神性を軸にお茶事業を世界に拡大し続けるTeaRoomの岩本涼や、盆栽プロデュースでラグジュアリーブランドともコラボする「TRADMAN’S BONSAI」の小島鉄平、さらにファッションアイコンとして世界で注目を集めるAMIAYAや、海藻を独自技術で栽培し日本の食文化を国内外に広めているシーベジタブル(蜂谷 潤、友廣裕一)など、多彩な文化起業家たちが顔を揃えている。

なかでも2回目の特集号で表紙を飾ってくれたヘラルボニー(松田崇弥・松田文登)の快進撃は加速するばかりだ。同社は障害のある「異彩作家」たちが生み出すアートを軸にビジネスを展開。作品をIP化することでさまざまな企業や業種とのコラボを実現し、その利益を作家たちに還元することで彼らの経済的自立をかなえる好循環を生み出している。2024年9月にはパリに子会社「HERALBONY EUROPE」を設立。本格的な欧州進出でIPのグローバル展開に乗り出した。さらに今年の6月には、世界最大級の広告祭カンヌライオンズで、「Glass: The Lion for Change」ゴールドを受賞。彼らの事業や実現しい未来の姿に共感する人々を世界中に増やし続けている。

こうした文化の力で新しい市場を切り開く勢いのあるカルチャープレナーたちを、 今年も新たに30人選出した。17人のアドバイザリーボードを中心に有識者や昨年の受賞者などに候補者を推薦してもらい、編集部が審査。若い世代を応援する意味を込めて45歳以下を中心とした。

選出基準は、これまでの1.文化資産や地域資源を掘り起こし、新しい価値やエコシステムをつくろうとしている人たち、2.日本文化の価値を世界に伝えていくことができる新たなリーダーシップをもつ人たち、に加えて、3.今、未来の新しい文化をつくろうとしている人たち、の視点を盛り込むこととした。文化とは常に更新されるものであり、時代によって「意味のイノベーション」を繰り返すものでもある。次世代の人々の生き方や視点を刷新する可能性がある取り組みや事業にも視点を広げたいと考えたからだ。また、長期的視点に立ちながら事業や未来を「cultivate(耕す)」するプロデューサーやコネクターも含むこととした。

日本経済の未来を照らす存在に

昨年6月、政府は「新たなクールジャパン戦略」を策定し、文化を成長戦略の柱に据える方針を明確にした。さらに経産省は、33年までにコンテンツの海外売り上げを20兆円規模に拡大するという野心的な目標を掲げている。この戦略では、アニメや映画などの制作拠点の地方分散や、「聖地巡礼」を活用した地域観光との連携、デジタル技術を駆使したグローバル展開などが重点施策に掲げられている。今日本は、1990年代の英国が「クール・ブリタニア」として音楽やファッション、アートなどのソフトパワーを国家戦略として打ち出したように、製造業中心から文化資本を基盤とする新しい経済構造へと移行する大きな節目に直面している。「文化」が経済成長戦略の中核になろうとする時代に主役に躍り出ようとしているのが、まさにカルチャープレナーたちなのだ。

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文=松﨑美和子

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