ワリード氏は「テロ組織の次のステップとして、(操縦者がドローンから見た視点の映像をリアルタイムで確認できる)FPVドローンや、妨害しにくい光ファイバーケーブルでつなげた有線FPVを導入するだろう。やらなければならない対策がたくさんある」と語る。より大きな被害を狙い、より大きな爆発物を搭載できるドローンや、中規模の兵器を備えた複数のドローンを使った攻撃も予想されている。
イスラム・テロ組織は自爆テロを繰り返してきた。ワリード氏は「今後は、ドローンによる自爆攻撃が増えるかもしれない。自爆テロは目標に確実にアクセスして殺害するための方法で、実行者は爆発物を運ぶラバ(運搬役)だった。ドローンは新しいラバになれる」と指摘する。
安価で、小型で、簡単に入手できるドローンは、過激派の活動に適している。ワリード氏が、アフガニスタンの闇市場の動きを分析したところ、過激派グループの多くが、犯行の手口にドローンを使うようになっている。TTPにとどまらず、ISIS、(パキスタンの遊牧民族)バローチ族のテロ集団、そして中国やイラン、中央アジア諸国を攻撃する作戦拠点としてアフガニスタンを利用するテロ集団にまで「ドローンを使った戦術」が広がる可能性が高いという。TTP問題とは別に、最近のインドとパキスタンの紛争でもドローンが大量に使われた。ワリード氏は「ドローンは南アジアの安全保障を不安定化させる要因になっている」と語る。
ドローンはもはや、国家はもちろん、テロ集団だけのものでもない。ブラジル・リオデジャネイロでは10月末、リオ市北部のファベーラ(貧民街)で、麻薬密売組織「コマンド・ベルメーリョ(CV)」に対する大規模な掃討作戦が行われ、警官4人を含む少なくとも64人が死亡した。現地メディアなどによれば、組織側はドローンを使って警察部隊に爆弾を投下するなどして抵抗したという。ワリード氏は「多くの国家や非国家組織が、ウクライナ戦争からドローンの使い方のヒントを得ているのだ」と語る。
警察庁は10月7日、ドローンによる違法な飛行対策について話し合う有識者検討会の初会合を開いた。ドローン規制法の改正も含め、飛行禁止区域の拡大や罰則適用の在り方について、年内にも報告書をまとめるという。日本の対応速度は、かなり遅れていると言わざるを得ない。


