経済・社会

2025.11.04 15:15

国家からテロ集団、麻薬組織にまで広がるドローン戦術 日本の対応は大丈夫か

10月28日、ブラジル・リオデジャネイロ北部地区のアレマオとペニャ団地で、コマンド・ベルメーリョ(CV)ギャングを標的とした大規模警察作戦の後、治安部隊が措置を講じる。当局によると、警察官4人を含む少なくとも64人が死亡し、81人の容疑者が拘束された。これは同州史上最も死者が多かった作戦となった。(Photo by Fabio Teixeira/Anadolu via Getty Images)

10月28日、ブラジル・リオデジャネイロ北部地区のアレマオとペニャ団地で、コマンド・ベルメーリョ(CV)ギャングを標的とした大規模警察作戦の後、治安部隊が措置を講じる。当局によると、警察官4人を含む少なくとも64人が死亡し、81人の容疑者が拘束された。これは同州史上最も死者が多かった作戦となった。(Photo by Fabio Teixeira/Anadolu via Getty Images)

パキスタンとアフガニスタンがにらみ合っている。10月末には一時、停戦協議が決裂しかけた。紛争の原因のひとつが、パキスタン北西部で活動するTTP(パキスタン・タリバン運動)によるテロ活動だ。最近は、無人機(ドローン)を使った攻撃を本格化させている。イスラマバードに本拠を置くシンクタンク、戦略ビジョン研究所のハマド・ワリード研究員は、「安価で小型のドローンはテロ集団にとってうってつけの兵器だ」と語る。ウクライナ戦争を契機に南アジアの政府やテロ集団にドローンが深く浸透しているという。

戦略ビジョン研究所のハマド・ワリード研究員
戦略ビジョン研究所のハマド・ワリード研究員

ワリード氏はTTPについて「パキスタンが直面している最大かつ最も脅威の高いテロ集団の一つ」と語る。2001年9月に起きた米同時多発テロを契機に、米国がアフガニスタンからタリバン政権と同盟者のアルカイダを追い出した後、アフガニスタンと隣接するパキスタン北西部の辺境地域(現カイバル・パクトゥンクワ=KP州)で過激派の反乱が急増。2007年にTTPが結成された。ゲリラ戦だけではなく、イスラマバードからカラチまでのパキスタン全土で数百件の自爆テロを起こしてきた。

TTPは汎イスラム主義を掲げ、宗派的に最も近いアフガニスタンのタリバンに最も近い。パキスタン政府は08年以降、複数の軍事作戦を実施してTTPを掃討してきた。ワリード氏は「タリバンが21年8月にカブールを占領した後、米軍が遺したアサルトライフルや暗視ゴーグルなど高度な装備を含む、約70億ドル相当の兵器を手に入れた。それ以降、TTPによるパキスタン北西部でのテロ攻撃が急増した」と語る。「アフガニスタンはTTP支援の砦で、兵站や訓練、宿泊施設を支援している」(同氏)という。

そのTTPが最近、ドローンを使った戦術を大幅に取り入れている。ワリード氏によれば、ドローン攻撃の報告が昨年末からみられるようになった。TTP自身のSNSには、パキスタンの法執行機関にドローンから迫撃砲弾を投下するなどの記録が残されている。今年7月には、TTPは南ワジリスタンにあるパキスタン軍の対テロ作戦拠点を攻撃し、パキスタン陸軍要員3人が死亡した。TTPは回転翼を4基搭載したクアッドコプターを使って爆発物を投下し、殺害した。同時期に1日に7回のドローン攻撃を実施したという情報もあるという。

同氏によれば、アフガニスタンの武器闇市場が、複数の過激派組織によって、高度な軍用装備の入手に利用されている。クアッドコプターは世界中で既製品を入手できるため、アフガニスタンに密輸され、過激派組織に販売されているようだ。パキスタン軍と地元警察もドローンを妨害する装備で武装しているが、予断を許さない。

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文=牧野愛博

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