ロボットは製造業の未来であり、導入は世界中で加速している。国際ロボット連盟(IFR)がここ数週間で公表したデータによれば、昨年、産業現場に導入されたロボットは54万台を超え、10年前の2倍に達した。
こうした報告は、人間に代わってロボットが配置された工場フロアの光景を想起させる。それは物語の一要素であることは間違いない。たとえば先月、自動車大手ヒュンダイ傘下のボストン・ダイナミクスは、産業用途向けに設計されたヒューマノイド(ヒト型)ロボット「アトラス」の最新版を発表した。しかし、少なくとも未来の一部は、まったく異なる姿になると考えるスイスの小さなスタートアップがある。
スイス・チューリッヒ拠点のMimic(ミミック)はこのたび、1600万ドル(24億5000万円。1ドル=153円換算)の資金調達を発表したが、同社は全身型のヒューマノイド・ロボットは多くの産業・製造タスクに対しては複雑すぎる解決策だと考えている。代わりに同社は、汎用のロボットアームに取り付けるロボットハンドを製造しており、繊細な操作性によって幅広い難易度の高い作業に対応できるとする。
「ヒューマノイドはエキサイティングですが、全身というフォームファクターが本当に価値を生む産業シナリオは多くありません」と、ミミックの共同創業者で最高プロダクト責任者(CPO)のステファン=ダニエル・グラヴェルトは語る。「当社のアプローチは、人工知能(AI)で駆動する巧緻なロボットハンドと、実績のある既製のロボットアームを組み合わせ、同等の機能をより簡潔で信頼性が高く、迅速に展開できるかたちで提供するものです」。
筆者が最初にミミックに取材したのは18カ月前で、同社が最初の250万ドル(約3億8000万円)のラウンドを調達していた時期だった。それ以来、同社は従業員数を5人から25人に増やし、フォーチュン500企業や自動車業界の大手メーカーと複数のパイロットプロジェクトを開始した。
同社が直面してきた課題は2つある。第一に、人間の手と同等の機能を持つロボットハンドを作ることだ。人間の手には30を超える筋肉、約27の関節、そして1万7000の触覚受容器と神経終末が含まれており、それを再現するのは難題だ。第二に、そのハンドを訓練し、さまざまな環境に展開して多様な作業をこなせるようにする方法を見いだすことだ。
そこでAIの出番になる、とグラヴェルトは説明する。「われわれは工場労働者に、日々の作業のこなし方に関する詳細なデータを取得できる手袋を装着してもらいます」。こうして収集されたデータを用いてAIモデルを訓練し、ミミックのロボットハンドが人間の技を再現できるようにする。作業環境の変化に応じた反応も含まれる(訳注:ミミックとは「真似をする」という意味)。
自分の仕事をいつか置き換えるかもしれない技術の訓練に協力させられることを、労働者は疎ましく思わないのだろうか。ミミックの主張によれば、実際には多くの労働者が、退屈で反復的な作業をロボットに引き渡すことに前向きである。加えて、特に欧州では多くのメーカーが深刻な人手不足に直面しており、ロボットがその穴を埋める可能性がある。生産拠点の国内回帰(リショアリング)や近隣回帰(ニアショアリング)の潮流が強まるなか、その効果はより大きくなるとみられる。



