宇宙

2025.11.07 10:30

木星が太陽系の特異な内部構成を可能にした、地球形成のお膳立ても

NASAの無人探査機ジュノー(Juno)が撮影した木星の南半球(Enhanced image by Kevin M. Gill (CC-BY) based on images provided courtesy of NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS.Media Usage Guidelines)

木星の作用とは?

木星の巨大な重力の影響が誕生したばかりの原始太陽系円盤に波及して「宇宙の交通渋滞」を引き起こしたことにより、細かい粒子が太陽に向かって螺旋状に落下するのを回避できたと、ライス大は指摘する。太陽に落下しなかった粒子は高密度の帯状領域に集積し、そこで凝集して岩石質の惑星の種である微惑星を形成したという。

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スリバスタバによると、太陽系の誕生から約150万年後に木星が成長すると、原始太陽系星雲に大きな空隙を形成し、ペブル(小石)や塵(固体微粒子)の内側への流れを妨げた。この障害により、内太陽系への固体物質の供給が遅延したわけだ。

木星の早期(太陽系形成から150万年以内)の成長が内太陽系の構造形成に及ぼした影響を段階的に説明した図(Rice University)
木星の早期(太陽系形成から150万年以内)の成長が内太陽系の構造形成に及ぼした影響を段階的に説明した図(Rice University)

これらすべては、銀河系における人類の家である地球について何を教えてくれるのか。

内太陽系からガスを減少させたことにより、木星は、岩石惑星が形成されて太陽から比較的離れた軌道を公転し続けることを可能にする条件を作り出したと、スリバスタバは説明する。これは、太陽系外惑星系でしばしば観測される、中心星の近くを公転するコンパクトな「スーパーアース惑星系」とは異なっているという。

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太陽系は特異か?

スリバスタバによると、もし木星が約200万年後と、はるかに後に形成されていたならば、成長途上の惑星が太陽に向かって螺旋状に落ち込む結果として、比較的広い間隔で分布する地球型惑星ではなく、中心星に近いスーパーアースの惑星系ができていただろう。

木星に似た惑星が存在しない惑星系については、どうだろうか。

スリバスタバによると、早期に形成される木星型惑星がない惑星系や、巨大ガス惑星がかなり後になって形成される惑星系でもやはり岩石惑星が形成される可能性はある。しかし、これらの岩石惑星は太陽系の岩石惑星に比べて、よりサイズが大きく、より高温で、より主星の近くを公転する可能性が高いという。

こと座の方向約980光年の距離にある太陽系外惑星系ケプラー62(Kepler-62)系(上)と太陽系の内太陽系(Inner Solar System)の比較イラスト。ケプラー62系はK型主系列星の主星の周囲に5つの惑星が見つかっており、うち2つ(62eと62f)はハビタブルゾーン内にある固体惑星スーパーアースの有力候補と考えられている(NASA Ames/JPL-Caltech)
こと座の方向約980光年の距離にある太陽系外惑星系ケプラー62(Kepler-62)系(上)と太陽系の内太陽系(Inner Solar System)の比較イラスト。ケプラー62系はK型主系列星の主星の周囲に5つの惑星が見つかっており、うち2つ(62eと62f)はハビタブルゾーン内にある固体惑星スーパーアースの有力候補と考えられている(NASA Ames/JPL-Caltech)

まとめ

木星は単に太陽系最大の惑星になっただけでなく、内太陽系全体の構成を設定したのだと、論文の第2執筆者でライス大の惑星科学者のアンドレ・イジドロは声明で説明している。それがなければ、現在知られている形態の地球が太陽系に形成されることはなかったかもしれないと、イジドロは続けている。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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