表参道・銀座の一等地に並ぶ世界のラグジュアリーブランド。その多くを手がけるGARDEが創業以来築いてきた「情緒的経営価値」創造の真価とは。EcoVadisシルバー評価を取得するなどWell-being 経営でも注目される同社の強みを、役員陣の言葉から紐解いていく。
世界のラグジュアリーショップからホテル、高層レジデンス、百貨店や飲食店、オフィス、スポーツやエンターテイメント複合施設まで、GARDEが手がける空間デザインは多岐にわたる。1985年の創業以来、気鋭のデザイナー集団として実績を重ねてきたGARDEは今、建築・環境デザインをはじめとした「デザイン事業」のほか、不動産売買から新規事業企画開発、海外事業進出支援まで手がけるなど、国内外のビジネスマッチングを行う「コンサルティング事業」、アート活動やメタバース開発、地方創生サービスなどの新規事業を含む「コーディネーション事業」の3つを事業の柱に据える。「情緒的経営価値」の創造をキーワードに、長く世界的なブランド企業に向き合ってきた代表取締役社長の室 賢治は、「お客様の心を動かす体験をいかに つくり出すか」にこだわり続けてきた。
「店舗収益や不動産価値などの“経営価値”を高めるためには、そのブランドがもつ企業の歴史や技術、理念を深く理解することから始めなければいけません。ブランド哲学をいかに翻訳して空間に落とし込んでいくのか。そこで働く従業員や訪れるお客様に、“自分そのものがブランドの一部である”と感じてもらえるような、ブランドストーリーを体現した空間を生み出すことが、我々の仕事だと考えています」(室)

国際デザイン事業本部のクリストファー・ブルックスもまた、「社内外それぞれに向けたブランドメッセージの理解」が、GARDEの強みだと話す。
「店舗デザインからオフィスデザイン、ホスピタリティデザインまで網羅しているのがGARDEの独自性です。店舗やオフィス空間というものは、人材採用においても大きな影響力をもっています。我々はGAFAをはじめ大手企業やブランドの空間づくりを担っており、その経営を中長期的に支えている自負があります」(クリス)
80を超えるラグジュアリーブランドとの取引実績のなかには、ポレーヌをはじめ日本初進出支援の事例も数多い。その背景にGARDEが有するローカルアーキテクトの貢献も大きいと話すのは、「日本に初進出する企業やブランドはすべてGARDEが手がけたい」と意気込むクリエイティブ統括本部の太田勝也だ。
「海外の著名な建築家や有名ブランドの発信したデザインもしくはイメージを受け、国内店舗においてそれをどう具現化するかを考えるのが、ローカルアーキテクト(LA)の役割。日本の法規や国内で調達できる素材に合うかたちで、ブランドが大事にする思いを継承していきます」(太田)
用地取得からデザインまで一気通貫で生み出す経営価値
企画開発事業本部で開発段階からのコンサルティング提案を担う石川 渡は、「ニーズがある場所で情報を取りに行く」姿勢で数々のプロジェクトに参画してきた。
「当部門のミッションは、マーケット調査や分析をもとに、デザイン以外の付加価値を高めていくことです。不動産事業部が取得してきた土地の価値を最大化するために、ホテルかオフィスか商業施設か、事業収支上ベストな提案を考え抜きます。例えば『カンデオホテルズ京都烏丸六角』では、京都の土地売却を検討する売主にデベロッパーを紹介すると同時に、ホテルのオペレーターも選出して提案し、我々が手がけたかったホテルをカタチにすることができました」(石川)
ここで強みとなるのは、デザイン事業部との連携だ。「ホテルを提案する段階でデザインコンセプトが描かれているため、デザインコンペなどが生じることなく、土地の取得から建築デザイン・インテリアデザインまで、GARDEが一気通貫で手がけることができる」。そう話すのはデザイン事業部の山本 豊だ。
「デザインや建築の機能面などひとつの側面だけではなく、企画案との連携で話を進めることで、お客様が思い描くビジョンを膨らませることができるのだと思っています」(山本)
用地取得からデザインまで、すべての領域でプロフェッショナルが揃うGARDE。不動産事業部の月安崇徳は、「“まず動く”という組織文化による“動きながら考える”クイックさが、事業成長を後押ししてきたのではないか」と分析する。
「不動産が見つかったから動くケースもあれば、こんな施設をつくりたいという企画ありきで不動産が動き出す場合もあります。役割の異なる役員が、すぐに全員集まり議論できるのもGARDEの良さ。有機的に絡み合い、案件が生まれていきます」(月安)
現在、世界11拠点に現地法人をもち大型ショッピングセンターなどのデザイン実績も広げている。業界に先んじて2005年にイタリアの現地法人を設立して以降、ニーズのある国・地域での拠点を増やしてきたのも「経済成長力がある都市にまずは行ってみる」と動いてきて今がある。
「我々は単にカッコよくてキレイな複合施設をつくっているわけではありません。これまで中国やASEAN諸国など現地で実績を重ねてきた経験から『こういう動線を設計したほうがお客様はスムーズに流れます』といったコンサルテーションもできる。表面的なデザインではなく、いかにその施設の営業効率を上げていくかといった経営価値に直結した提案ができる点が、GARDEの信頼を築いているのでしょう」(室)
さらにGARDEの独自性は、メタバース事業や地方創生事業、アート事業といった新規事業への投資姿勢にも表れる。例えばメタバース事業では、GARDEが数多く所有するリアル店舗のデザインデータを活用し、メタバース上の店舗設計につなげていく。新規事業をリードする島田克哉は、「培ってきた資産を生かした事業の可能性」に期待を寄せる。2025年1月にはNYの一等地・チェルシーに300平米弱のアートギャラリー「GOCA」をオープンするなど、収益化が難しいとされる事業に挑戦を続けている。
「長期的な経営価値をいかに築いていくかは、我々がお客様に提案するうえで大切にしてきた考え方です。アート事業といったすぐには結果につながりにくい事業に投資をしているのも、GARDE自体が、長期的な視座に立って成長を続けていきたいという思いの表れであり、社内外にそのメッセージを発信し続けたいと考えています」(島田)
写真前列
中央:むろ・けんじ◎代表取締役社長
左:しまだ・かつや◎専務取締役グローバル統括本部本部長
右:おおた・かつなり◎常務取締役クリエイティブ統括本部本部長
写真後列
左:いしかわ・わたる◎執行役員 企画開発事業本部本部長 シニアディレクター 一級建築士
左から二番目:やまもと・ゆたか◎執行役員 デザイン事業本部本部長 シニアディレクター
右から二番目:つきやす・たかのり◎執行役員 不動産事業部本部長
右:Christopher Brooks◎執行役員 国際デザイン事業本部本部長 デザインディレクター Architect, M.Arch(米国資格)



