約6700億円の損失、メタバース事業の二の舞を市場は懸念
同社はまた、ザッカーバーグが社名変更の動機としたメタバース事業が同じ道をたどると懸念している。メタは2021年から2022年にかけて「次世代のコンピューティング基盤」としてメタバースに巨額を投じたが、成果は乏しかった。CNBCによれば、拡張現実(AR)への投資で四半期ごとに数十億ドルを失う中、最新の四半期ではリアリティーラボ部門が4億7000万ドル(約719億円)の売上に対し、44億ドル(約6732億円)の損失を計上している。
ザックスのアナリスト、ブライアン・マルベリーもメタのAI投資に懐疑的だ。「総支出額の大きさが気掛かりだ。いつになれば投資がバランスシートに反映されるのか、もっと明確に示すべきだ」とウォール・ストリート・ジャーナルに語った。
彼はさらに、「投下資本利益率(ROIC)はわれわれにとって極めて重要な指標だが、同社がその内訳をあまり明確に示していない点が懸念を和らげていない」と付け加えた。
それでもメタはデータセンターへの投資を緩めていない。WSJによると、ザッカーバーグは最近ホワイトハウスで開かれた夕食会で「2028年までに米国内でデータセンターなどのインフラに6000億ドル(約91.8兆円)を投じる計画だ」と述べたという。
広告以外の新規ヒットに乏しく、革新力と説明責任に疑問
メタが「超知能」への巨額投資でどれだけのリターンを得られるのかという疑問の背景には、より根本的な問題がある。ザッカーバーグは、広告ビジネス以外で、イノベーターとして大きな成功を収めた例がほとんどないという点だ。
彼が優れているのは、実行力や戦略的な買収、そして収益化を着実に進める手腕だ。ソーシャルネットワーキングという概念そのものは他者が生み出したものだが、ザッカーバーグはそれを拡張し、ニュースフィード機能や大規模なターゲティング広告を構築した。また、インスタグラムの成長機会を見抜いて10億ドル(約1530億円)で買収し、それをeMarketerの推計で2025年の年間売上予測が630億ドル(約9.6兆円)という巨大事業に育て上げた点は、彼の最大の功績といえる。
一方で、ザッカーバーグは、AI投資がどう収益製品になるかを説明する(伝える)のに苦労している。ザッカーバーグは決算説明会で同社の「メタ・スーパーインテリジェンス・ラボ(MSL)」が開発中のAIモデルに関して、「このモデルを実装し、他社にはない独自の機能を持つフロンティアモデルを完成させることができれば、極めて大きな成長機会になると考えている」と述べていた。
約3.1兆円の売上、OpenAIのChatGPTと対照的なメタ
しかし、このザッカーバーグの説明は、OpenAIとは対照的だ。同社はChatGPTで年間200億ドル(約3.1兆円)の売上を上げており、たとえ赤字でも「実際に急成長中のプロダクトが存在する」とTechCrunchは指摘する。「OpenAIのブームの裏には急速に拡大するARR(年間経常収益)があり、それが多くの疑問への答えになっている」と同メディアは述べていた。
ただし公正を期せば、メタもいくつか有望な実験に取り組んでいる。そのひとつがAIアシスタント「メタAI」で、フェイスブックとインスタグラムの30億人のアクティブユーザー基盤に支えられ、10億人以上の利用者を獲得している。ただし、ChatGPTの競合と呼べるほどの存在ではない。
また、動画生成ツール「Vibes」も日次アクティブユーザー(DAU)の増加には寄与したが、事業としての規模はまだ限定的だとTechCrunchは述べている。さらに、メタは最近発売したスマートグラス「Vanguard」にも取り組んでいるが、これも「大規模言語モデル(LLM)の力を活用する本格的な試みというよりは、リアリティーラボの研究開発の延長線上にある」と同メディアは評している。


