「トレンドは味方だ」という表現があるが、金についてはそのトレンドは明らかに上昇基調だった。
だが現在、価格が4400ドル直前まで上昇したのちに上げ相場は反転した。現在の金価格はおよそ4000ドルだ。
本記事のタイトルだけ見れば、金は暴落したと思った人もいるかもしれない。それでも金への熱狂が依然として強く、最後の買い手が列をなして参入しようとするなかでは、天が落ちてきたかのように感じた人も多いだろう。FOMO(取り残されることへの恐怖)は身を滅ぼすは、と先日、著者のYouTubeチャンネルで述べたとおりだ。
しかし長期投資家にとって、この押し目は大した問題ではない。金の保有は値上がり益を狙う投資だけではなく、悪い時代やインフレへのヘッジでもあるからだ。
まさにその「悪い時代」への警戒こそが、過去1~2年の金価格上昇を牽引してきた要因であり、トレンドは明白だ。
世界的な緊張の高まりが価格を押し上げている。各国政府は戦略備蓄として金を積み増している。金は「戦争の通貨」だからだ。各国が不安を募らせると、金融の備蓄、いわば通貨面での再軍備に動き始める。この再軍備はすでに現実化している。ウクライナ・ロシア戦争はNATOを引き続き脅かしており、2027年と目されている中国による台湾への介入が、次の世界的な議題の火種になっている。
この地政学的なストレスの段階的な高まりは、金の再評価と、チャート上での新たな均衡水準の形成に表れている。
長期トレンドに向けたプルバックが起きる可能性は確かにある、しかしそれは、単なる安定化ではなく、むしろ世界の摩擦の減少を意味することになり、ましてや摩擦の増大ではない。
むしろ横ばいでの推移の後に、再び上方ブレイクする展開のほうがあり得るだろう。ある紛争が別の紛争に取って代わるからである。新たな火種となり得る地政学的争点はいくらでもある。
トランプが「勝利を宣言して帰途についた」としても、米中のライバル関係は依然として揺るがない。台湾問題が決着に向けて大詰めを迎えると見なされる2027年に向けて、再び火が点く可能性が高いように思われる。
緊張がもう一段高まれば、金価格は再び急騰する公算が大きく、次の「キリのよい」水準が自然なターゲットになり得る。市場が幅広い注目を集めたときに好まれる心理的な節目だ。
金保有者である私の戦略は単純だ。じっと構えることである。これから横ばいの時間帯が広がり、その後、強気と弱気の新たな攻防が展開されると見ている。
自分にとっては、強気側が金をさらに押し上げる余地はなお大きい。
免責事項:筆者は金を保有している。



