新たな理論や実践の技を指南するビジネス本が次々と出版されるが、はたして本当に役立っているのだろうか。統計学的調査から、さまざまなファクトが判明した。
企業のブランディング支援などを展開するトゥモローゲートは、統計学の専門家である立命館大学の田中力特任教授と共同で、15歳以上の男女300人を対象にビジネス本に関する全国調査を実施した。それによると、ビジネス本が役に立ったと感じている人は42パーセントとやや少ない結果となった。ただし「どちらとも言えない」層が多く、読み方で効果が変わることも示唆された。
ではどう読めばいいのか。調査からは、年収を上げるためには「何冊読むか」よりも「何度読み返すか」のほうが重要であることが判明した。何度も読む人の平均年収は923万円だったのに対して、1回しか読まない人の平均年収は427万円だった。
また、ビジネス本を役立てられると回答した人には運動部出身者が多かった。なかでもサッカー部だ。さらに、飲み会参加者では、ビジネス本を読まない人のほうが年収が6万8729円高いという意外な結果も出た。月1回以上飲み会に参加する人の間では、ビジネス本を読まない人のほうが自分の仕事に胸を張れるスコアが高かった。飲み会で先輩から話を聞くのも、ビジネス本を読むのも「学びの本質は同じ」とトゥモローゲートは指摘する。

これらを総合すると、ビジネス本をもっとも役立たせられる人は、学生時代にサッカー部に所属し、偏差値60〜65の大学で理系を専攻し、専門職の経営者として年収800〜900万円の鳥取県在住の20代という人物像となった。あくまでも統計の結果だ。
そもそもこの調査は、トゥモローゲートの代表、西崎康平氏が『レベルゼロ』というビジネス本を出版した際に、ビジネス本を200冊読んだ社員が発した「ビジネス本なんて読んでも意味ないですよ」という言葉がきっかけで始められた。西崎氏と役に立たないと主張する社員との「意地」をかけた調査だったということだ。

最終的に西崎代表に軍配が上がった。統計上、ビジネス本の内容を「素直に受け入れて行動できる人ほど成果を出す」傾向が明らかになり、「ビジネス本が役に立たないんじゃなくて、役に立たせようとしていないだけ」との結論に達したのだ。「疑う前に信じてやってみる」のがビジネス本を最大限に活かす秘訣だとトゥモローゲートは話している。



