暗号資産

2025.11.05 12:00

トランプの暗号資産アドバイザーが明かす、逆さ合併で挑む「ビットコイン銀行」

2025年5月28日、ビットコイン・カンファレンスに登壇したデイビッド・ベイリー(Photo by Ethan Miller/Getty Images)

2025年5月28日、ビットコイン・カンファレンスに登壇したデイビッド・ベイリー(Photo by Ethan Miller/Getty Images)

ビットコイン・マガジンの発行人デイビッド・ベイリーは、ユタ州の小さな医療クリニックを「ビットコイン版バークシャー・ハサウェイ」に変えられると信じている。だが、株式市場はその夢を信じていない。

逆さ合併が試練となり、株価は急落

デイビッド・ベイリー(35)が振り返るこの半年は、「映画『プライベート・ライアン』さながらの激戦」だったという。彼は、企業のビットコイン準備金を保有するために設立したデジタル資産管理会社ナカモト・ホールディングスのCEOを務めている。だが、彼が仕掛けた最大の賭けである、同社とユタ州の上場医療企業カインドリーMDとの合併は、栄光から試練へと一転した。両社は2025年5月に逆さ合併し、合併後の新会社はナスダックでティッカーシンボル「NAKA」として取引されている。

「この半年の株式市場での成果は悲惨なものだった」とベイリーは語る。NAKAの株価は、わずか6カ月で25ドルから0.92ドルにまで急落した。

ビットコイン界の著名人、トランプ大統領とも接点

ベイリーはナスダック上場企業の経営者としては、異色の存在だ。彼はビットコイン・マガジンのCEOとして知られ、世界最大のビットコイン・カンファレンスを主宰している。ドナルド・トランプをビットコイン支持者に転向させた人物でもある。「私たちの目標は、世界一のビットコイン企業になることだ」という。

ユタ州拠点の上場企業カインドリーMDは、5月にベイリー率いるナカモト・ホールディングスと「ビットコインを中核とする持株会社」への転換を狙った逆さ合併を発表した。従来型と代替医療の双方を提供する医療クリニックの運営会社で、昨年の年間売上高が270万ドル約4億1000万円。1ドル=153円換算)だ。また現在、約6億5300万ドル(約999億円)相当のビットコインを保有している。

ウォール街はベイリーの構想をほとんど評価していない。NAKAの株価は5月に35ドル近くまで上昇したものの、10月の大半で1ドルを下回り、保有する5765ビットコインの帳簿価値に対して40%ものディスカウントで取引されている。

私募増資が裏目、株価暴落の背景

ナカモトの苦境は、皮肉にも自らの資金調達方法が原因だった。同社は暗号資産の購入資金を得る目的で、上場企業向け私募増資(PIPEs)取引を連発し、その総額は約5億6300万ドル(約861億円)に及んだ。これらの取引で大量の新株が「非公開枠の投資家」(機関含む)に大幅な割引価格で売却され、既存株主の持分が大きく希薄化した。9月には、これらPIPE株の一部が売却可能となり、投資家が利益確定を急いで市場に殺到。株価暴落の引き金となった。

さらにベイリーは、株主宛の書簡で「短期売買目的の投資家は今すぐ株を手放してほしい」と呼びかけ、火に油を注いだ。

「短期売買を狙う投資家は、会社にとって負担の大きい存在だ。この考え方を好まない人もいると聞いているが、私たちは長期的な方向性で足並みをそろえられるパートナーを求めている。これは私たちにとって“総力戦”だ」とベイリーは述べている。

次ページ > 関連事業を統合し、約306億円の価値を上積みへ

翻訳=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事