金融の歴史を再現する、「ビットコイン銀行」構想
ベイリーは、これまでの13年にわたるキャリアで100社以上のビットコイン関連企業に投資してきたと語る。なかでも好成績を上げたのは、日本のメタプラネットと英国のスマーター・ウェブで、いずれも100万ドルの投資を100倍以上に増やしたという。だが、彼にとっての成果は金銭的なものだけではない。「優れたアイデアは模倣される。1万社のビットコイン企業が花開けば、私たちの勝ちだ」と彼は言う。
ウォーレン・バフェットから学んだその長期的な視点を、ベイリーはカインドリーMD/ナカモト(統合体)の経営にも生かしている。彼の構想では、同社は利益を上げながら独立して運営される子会社を傘下に持つ巨大な持株会社へと成長していく見通しだ。ベイリーにとってそれは単なる投資戦略ではなく、「金融の歴史の再現」でもある。
彼が「ビットコイン・スタンダード」と呼ぶこの構想は、かつての金の進化の過程を思わせる。金塊を扱う金商会が金取引銀行へ、やがて中央銀行や投資銀行へと発展していったように、ベイリーは、ビットコインを保有・運用する企業が今後「デジタル版の金商会」へと進化し、やがて新たな銀行になると考えている。
カインドリーMD/ナカモト(統合体)は、その移行を後押している。同社はすでに、日本のメタプラネットやオランダのトレジャリーB.Vなどビットコイン保有企業への投資を進めている。「ETFの種をまいている姿を想像してみてほしい」とベイリーは説明する。「私たちはそれを企業株式という形で世界各地に展開している。アクティブ運用型ETFの“種まき”なんだ」。
もっとも、ベイリーの会社を含むこうした企業の多くは、逆さ合併によって上場しており、通常のETFや新規株式公開(IPO)のような米証券取引委員会(SEC)による精査や審査を経ていない。
ウォール街デビューは惨敗、「再び立て直せる」
ウォール街での惨憺たるデビューを、今の彼はほとんど気にしていない。「ビットコインの素晴らしいところの1つは、何度でもやり直せるところだ。キャリアで失敗しても、再び立て直せる」とベイリーは語った。


