3. サトウキビ
小麦が文明の象徴なら、サトウキビは帝国の象徴だ。もともとは東南アジアで栽培されていたが、その当時すでに、地中海沿岸地域にも広まっていた。コロンブスが航海に乗り出した15世紀末には、カナリア諸島の輸出品として利益も出ていた。
コロンブスは2度目の航海で、サトウキビの挿し木を積み込み、カリブ海に浮かぶイスパニョーラ島に上陸したときに、それを植えた(同島は現在、ハイチとドミニカ共和国が分割統治している)。
イスパニョーラ島は、火山性土壌と、豊富な雨量に恵まれていた。加えて、先住民に働くことを強いた労働も極めて効率的だったため、16世紀になると、カリブ海地域はプランテーション制度の中心地となった。こうして世界経済は再編され、さらには人間の社会も大きく変化することとなった。
生物学的な観点から見ると、サトウキビ栽培は、現地の風景を一変させた。森林は広大なプランテーションに変貌し、河川の自然な流れは変わり、土壌の浸食が激増した。生態学的な観点で見ると、サトウキビは、カリブ海諸国で今も際立つプランテーション生態系を生み出した植物といえる。
4. 柑橘類
コロンブスが持ち込んだ植物のうち、最大の成功を収めたものには、オレンジやレモン、ライムといった柑橘類もある。柑橘類は東南アジア原産だが、地中海沿岸でも長きにわたって栽培されてきた。
コロンブスが1493年に柑橘類の種と苗を持ち込んだカリブ海には、降り注ぐ熱帯の太陽と、水はけのよい土があった。それから数十年足らずで、現在のハイチ、ドミニカ共和国、プエルトリコでは、多種多様な柑橘類があちこちで栽培されるようになり、のちにフロリダやメキシコにも広がっていった。
注目すべきは、南北アメリカに柑橘類の在来種が存在しなかったことだ。柑橘類は完全なる外来種だった。しかし今では、柑橘類は熱帯および亜熱帯農業の経済的な柱となっている。


