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2025.11.11 10:00

婚前契約の民主化に挑む「ハロー・プレナップ」、投資家の酷評からシェア20%獲得までの逆転劇

Eva Corbella / stock.adobe.com

ハロー・プレナップの基本プランは1組あたり599ドル(約9万2000円)となっている。弁護士によるレビューと修正を加える場合は、約2000ドル(約30万8000円)となる。手続きの流れは、オンラインでの確定申告に近い。まず、関連法に準拠するために、カップルは居住予定の州を選択する(ハロー・プレナップは全米48州で利用可能)。次に、双方が質問票に回答し、婚前資産を明示するための財務開示書を作成する。離婚時の資産分割に加え、凍結胚の扱いや配偶者の死後に契約を有効とするかどうかなど、踏み込んだ質問も含まれる。必要に応じて弁護士に相談することもでき、その場合の料金は20分当たり49ドル(1人当たり)となっている。

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双方の入力が完了すると、ハロー・プレナップのシステムが食い違う回答を検出し、カップルはそれぞれの争点について「相手の回答を受け入れる」か「自分の回答を修正する」かを選ぶ交渉フェーズに移行する。多くの人にとって、これは人生を左右しかねない選択だ。

最後に婚前契約書に署名し、オンラインで公証を受けることもできる(追加料金50ドル)。基本プランの利用者(全ユーザーの約80%)は、法的助言および代理を受けないことに同意する書面に署名する。

ハロー・プレナップを立ち上げてからわずか数ヵ月後の2021年、ロジャースと共同創業者のサラベス・ジャッフェは次の資金調達に向けて動き始めていた。そんな折、ロジャースのもとにABCの人気番組『シャーク・タンク』(起業家が事業アイデアや製品を投資家たちにプレゼンし、出資獲得を目指すリアリティ番組。米版『¥マネーの虎』)のオーディション招待メールが届いた。当初、彼女はいたずらかと思ったという。その後、4ヵ月に渡るオーディションを経て、収録のわずか1ヵ月前に出演が正式に決定したという。

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ロジャースは、カリフォルニア州カルバーシティのスタジオに、純白のブライダルスカートとベール姿で姿を現した。テレビで見慣れていたように、テーマ曲に合わせてジャッフェとともに入場する段取りを思い描いていたが、実際には音楽は流れず、スタジオは静まり返っていたという。「想定外の静寂に戸惑った」と、彼女は当時を振り返る。

番組内で、ロジャースとジャッフェはハロー・プレナップの評価額を150万ドル(約2億3000万円)と見積もり、株式の10%を15万ドル(約2300万円)で提供する条件を提示した。当時、同社が実際に作成した婚前契約書はわずか25件、売上高は2万ドル(約300万円)に過ぎなかった。それでも二人は、翌年度の売上高を「控えめな予測」として410万ドル(約6億3000万円)に達するとプレゼンした。

その強気な見通しに対し、審査員たちは口々に懐疑の声を上げた。IT起業家であるロバート・ハージャベックは、「売上予測を語るまでは良かったが、その数字は完全な夢物語だ」と言い、ビリオネア投資家のマーク・キューバンも「それは夢にすぎない」と切り捨てた。

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編集=朝香実

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