音楽

2025.11.06 15:15

日本の音楽コンテンツ、海外進出のカギは「インディペンデントアーティスト」 20兆円市場に向けて経産省が取り組む構造的課題とは

今年7月30日に、台湾のZepp New Taipeiで、観客2000人以上の規模のライブを成功させた高瀬統也。アジアで熱狂的な支持を集める注目のインディペンデント・アーティストだ。Photo by Still Photographer / Muu®︎(asherads)

今年7月30日に、台湾のZepp New Taipeiで、観客2000人以上の規模のライブを成功させた高瀬統也。アジアで熱狂的な支持を集める注目のインディペンデント・アーティストだ。Photo by Still Photographer / Muu®︎(asherads)

経済産業省(以下、経産省)は今年の6月に、日本のコンテンツ産業の海外売上高を2033年までに20兆円に引き上げるという目標を掲げた「エンタメ・クリエイティブ産業戦略」を策定した。戦略に含まれるコンテンツの注力分野は、ゲーム、アニメ、漫画、書籍、音楽、映画、アート、ファッションなど10分野に上るが、この巨大な目標を達成する上で、音楽産業は業界特有の構造的課題に直面している。

課題の一つとして挙げられるのが、ソニー・ミュージック、ユニバーサル ミュージック、ビクターエンタテインメントといったメジャーレーベルに属さずに活動するインディペンデントのアーティストを取り巻く環境だ。

日本の音楽産業に欠けている視点

デジタルテクノロジーによって、音楽アーティストが楽曲を制作し、配信・流通、プロモーションを行うハードルは大きく下がり、DIYで活動する選択肢は劇的に広がった。そして、ストリーミング市場の成長に伴い、世界的にインディペンデントのアーティストの数は劇的に増加している。

こうした動きに対応するように、グローバルでは、アーティスト自身が選択する活動のあり方やそれを支える音楽ビジネスモデルの多様化が進んでおり、世界最大級の音楽フェスティバルであるコーチェラでも、出演アーティストの大半はインディペンデントで活動するアーティストであるのが実態だ。規模を問わず、「インディペンデント」はアーティストにとって、ごく当たり前の選択肢となり、グローバルで巨大な市場を形成している。

しかし、日本ではこうした変化に対して、音楽業界の構造や公的支援のあり方が追いついていない部分があるのが現状だ。特に、インディペンデントのアーティストの活動を支えるためのビジネスモデルや支援のあり方が未成熟の日本では、インディペンデントアーティストが活動を立ち上げ、ファンベースを広げていくためのベストプラクティスが共有されておらず、インディペンデントのアーティストのプロモーションの発想も、テレビをはじめとするマスメディアでの露出や既存の大型のフェスへの出演といったメジャーアーティスト主軸のアプローチに捉われてしまう場合が多い。

公的な支援を行う行政や業界団体においても、メジャー以外のアーティストを取り巻く現状や課題の把握がこれまで進んでこなかったことで、日本には、世界的にも多様かつ豊かなアーティストの土壌があるにも関わらず、インディペンデントアーティストの活動実態が「ブラックボックス化」してしまい、必要な支援やビジネスモデルの構築が遅れてしまった。韓国政府が、一部の音楽レーベルやアイドルグループに対して投資や支援の「選択と集中」を行ってきたことで、K-POPの海外進出を成功させたことも、日本で、メジャーアーティストと並行したインディペンデントのアーティストへの支援の重要性に対する理解が遅れた要因として考えられる。

現状、国内アーティストの海外展開では、YOASOBIやRADWIMPSを筆頭に、アニメをはじめとする他IPとのコラボレーションやSNSでのバズによって海外進出が成功する事例に注目が集まっているものの、アーティスト自身がオーガニックにファンベースを広げ、海外に進出していくアプローチについても、アーティストが選択可能なオプションとして確立されていくべきだろう。

賛否両論の「クールジャパン」を経て、再び音楽コンテンツに対して、アニメ・タイアップとSNSバズへの「選択と集中」を求める声もあるが、成功のフレームワークばかりに目が向き、国内にある作品やクリエイティブの豊かな土壌や海外進出に向けて大きなポテンシャルを持つアーティストたちの存在を見逃してしまっては本末転倒だ。

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文=原田圭

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