特に注目すべきは、Firefly Foundryだ。これは、企業とAdobeが連携し、ブランド独自のデータでトレーニングされたセキュアなカスタムAIモデルを構築するマネージドサービスである。単なるツール提供ではなく、Adobeが伴走してブランド専用のAIモデルを構築する。
Firefly Creative Production for Enterpriseでは、AIアシスタントがワークフローを構築し、画像の切り抜きや背景生成などを自動化する。数千のバリエーションを数クリックで生成できる。Red Hatの事例では、コンテンツの市場投入までの時間が70%短縮されたという。この数字は、単なる効率化ではなく、ビジネスのスピードそのものを変える威力を示している。
Adobe Express for Enterpriseは、ブランドガイドラインに準拠したテンプレートを提供し、非デザイナーでも迅速にコンテンツを制作できる環境を構築する。デザイナーは戦略的なブランドアセットの開発に集中し、日常的なマーケティングコンテンツは各部門の担当者が自律的に制作する。デザイン部門のボトルネックが解消され、組織全体のコンテンツ生産力が飛躍的に向上する。
Firefly Custom Modelsによって、大量生産でありながら、すべてがブランド独自のスタイルを持つ。企業内でのクリエイティブの活用は加速するだろう。
“クリエイターになるためのチケット”
クリエイティビティの民主化という言葉は、もはや陳腐に聞こえるかもしれない。
しかし、Adobeは従来からのプロフェッショナルなクリエイター向けに質の高いツールを提供し、改良し続けるとともに、生成AIを通じて“クリエイティビティの民主化”を具体的な形で提供し始めた。
クリエイティブを実現するには、アイデアを実現するスキルやツール、プロセスのノウハウが必要不可欠だった。しかしFireflyという生成AIにアクセスする統一されたフロントエンドがあり、Adobe Expressという優しい入口があり、エージェント型AIというパートナーが生まれようとしており、カスタムモデルで個性を表現することすら可能になった。
Adobeにとっての課題は、Premiere MobileとYouTubeの連携によるスマートフォンユーザーへの訴求だろう。彼らはプロ品質のコンテンツを制作し、世界最大の動画プラットフォームに即座に公開できるとしているが、実際に使われるようになるかは未知数だ。
また企業向けには、Gen Studioによって、コンテンツサプライチェーン全体を変革しようとしているが、日本企業に響くものになるかは、こちらも予想が難しい。
しかし、誰もが“クリエイターになるため”のチケットは用意された。
企業であれ、代理店であれ、個人であれ、そこに参加するためのハードルは驚くべき速度で下がりはじめている。そして、そのすべてが、Adobeという統一されたプラットフォームの中で、シームレスに実現される時代が到来している。


