つまり2024年にアナリストたちが“Adobeを侵食するライバル”と見做していた企業が、今や個々の企業と契約をしなくともAdobeのクレジットで利用できるのだから、ライバルではなくパートナーとみなすべきだろう。
基調講演にはGoogleの幹部も登壇し、AdobeとGoogleが、それぞれが提供するAIモデルをリリースと同時に、それぞれの提供するサービスやアプリケーションで利用可能になることも確認された。
もちろん、それらのAIモデルはFireflyだけではなく、PhotoshopやIllustrator、Premiere Proからも直接呼び出せる。統一されたユーザーインターフェース、統一された生成クレジットで利用できる。
“優れた生成AIの断片”を統合
賢明な読者はわかるだろうが、そうした生成AIの新興勢力とAdobeは、そもそも競争はしておらず、Adobeのクリエイティブ基盤をもとにエコシステムを構築していた。どんなに優れた画像を生成しても、最終的な仕上げには何らかのツールの使用が伴う。
例えば、Adobeがこのイベントで発表したFirefly Image Model 5は、極めて高品質な画像を生成する。しかし、それは“最高品位の商用利用可能な生成AIモデル”を目指して開発しているもので、他に異なる特徴の生成AIモデルがあるのなら、そのモデルにアクセスできる方がいい。
たとえば、画像のディテールをそのままに部分的に編集するのであれば、GoogleのGemini 2.5 Flash(Nano Banana)を使うのが常道。しかし一旦書き出してアップロードするのでは効率が悪い。
Adobeのツールを使えば、主要なAIモデルを一貫した環境で作業を継続できる。新しく追加された「プロンプトで編集」機能では、日常的な言葉で画像への編集内容を説明するだけで、オブジェクト対話型編集が可能になった。この機能は、Firefly Image Model 5に加えて、Black Forest Labs、Google、OpenAIの各パートナーモデルにも対応している。
いうまでもなく、生成AIの技術革新は、驚異的なスピードで進んでいる。優れた生成AIは今後も登場し続けるだろうが、そうした優れた生成AIの断片を「統合」できるとするなら“クリエイターが集まる場”が適している。


