※独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構によれば、マンガン団塊は米国ハワイ沖やインド洋などの海洋底に半埋没する石で、レアアースを含有することから、1970年代には探査と大規模な採掘試験が行われた。近年、ハワイ沖の海域など、排他的経済水域の外側である「公海」上でマンガン団塊の鉱区を取得する動きが再度活発化している。
重なりのある場所にはリスクが存在する
ハワイ大学マノア校の海洋学者らが主導し、『カレント・バイオロジー』誌に掲載された新しい研究によると、30種のサメ、エイ、そしてゴーストシャークとも呼ばれるキメラ類の生息域は、(マンガン団塊などを採掘する)深海鉱物資源開発が計画されている海域と重なっていることが明らかになった。
これらの種の約3分の2はすでに人間活動の影響で絶滅の危機に瀕しているが、海底をかき混ぜ、大量の堆積物を上層水域に放出する深海採掘は、その絶滅リスクをさらに高める可能性がある。
本研究の筆頭著者でハワイ大学マノア校海洋地球科学技術学部(SOEST)の大学院生アーロン・ジュダ氏は、「深海採掘は、海洋生態系だけでなく人類の文化やアイデンティティにとっても重要なこの動物群に対する、新たな潜在的脅威である」と述べた。
「この脅威を特定し、注意喚起するとともに保全策を提言することで、将来にわたってサメ、エイ、キメラ類の健全な個体群を維持するための基盤を整えられることを期待している」
ジュダ氏は国際的な専門家チームと協力し、IUCNサメ専門家グループが作成した世界の種分布図を、国際海底機構(ISA)が深海採掘用に割り当てた契約区域および保留区域と重ね合わせた。
研究チームはさらに、各種の繁殖方法や潜水深度を考慮し、採掘の影響に対する脆弱性を推定した。例えば、エイやキメラ類のように海底に卵を産む種では、採掘車両が保育場に脅威をもたらす可能性がある。
評価対象には、ジンベエザメ、マンタ、メガマウスザメなどの象徴的な種に加え、ピグミーシャーク、チョコレートエイ、ポイントノーズキメラ(サメやエイに似た軟骨魚類の特殊なグループで、ゴーストシャークとも呼ばれる)など、あまり知られていないが興味深い深海生物も含まれていた。



