サイエンス

2025.11.26 15:15

オーストラリア最凶のヘビ、ヒト血液を凝固させる咬傷致死毒の正体

Getty Images

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オーストラリア クイーンズランド大学の研究によると、オーストラリアに生息するコブラ科ブラウンスネーク属の毒蛇、イースタンブラウンスネーク(Eastern Brown Snake)に噛まれた患者に投与される抗毒素が十分な効果を発揮していない可能性があり、これを受けて病院での症例再検討が進められている。

「血液凝固毒素」は一様ではない

オーストラリア クイーンズランド大学環境学部のブライアン・フライ教授が率いる研究チームは、オーストラリアに生息するすべてのイースタンブラウンスネークの毒液に含まれる血液凝固毒素を詳細に分析した。その結果、毒の成分が種によって異なることが明らかになった。

フライ教授は「イースタンブラウンスネークの毒は一様ではない。つまり、命を救う抗毒素には早急な改良が必要かもしれない」と指摘している。

「いくつかの毒液は血液中で岩のように固い凝血塊を作る一方で、別の毒液は急速に凝固するものの、もろく、ほぼ瞬時に崩れてしまう。どちらの毒も致死性はあるが、作用の仕方はまったく異なる」とフライ教授は説明する。

研究チームは血液凝固を評価する「トロンボエラストグラフィー」という手法を用い、オーストラリア南部のイースタンブラウンスネーク(Pseudonaja textilis)が、強く安定した血栓を作る「タイパン様」の毒液を持つことを明らかにした。

一方、北部個体群のイースタンブラウンスネークやその他すべてのブラウンスネーク種の毒液は、凝固速度は非常に速いものの、形成される血栓は脆弱であった。

咬傷の影響、南北地域で━━

「北部地域での咬傷と南部での咬傷では、血液に及ぼす影響が天と地ほども異なることが、我々のデータで示された」とフライ教授は述べている。

現在、オーストラリアのブラウンスネーク用抗毒素は、出身地が特定されていない複数の毒液を混合して製造されている。北東部と南東部のイースタンブラウンスネーク両方の毒液が抗毒素に含まれていなければ、効果の範囲は不均一になり、有効性にも大きなばらつきが生じる可能性がある。

これまでの臨床報告では、種や生息地に関わらず全ブラウンスネークの咬傷症例がまとめて扱われてきたため、南部個体群とその他のブラウンスネークとの違いが見えにくくなっている可能性がある。

次のステップとして、数百件の病院カルテを再検証し、差異の有無を確認する予定だ。南部の強凝固系統が生息する地域には他のブラウンスネークがいないため、この分析が可能である。

報告された咬傷事例を地理的に再分類することで、凝固作用が強いタイプと弱いタイプのブラウンスネークの間で凝固パターンの違いを明確に解明できる。

さらに、入手可能なヒト用および獣医用抗毒素を緊急に試験し、毒液の生化学的な差異が抗毒素の有効性の違いとして反映されるかどうかを検証する。

既存の抗毒素は命を救ってきたが、新たな知見により「精密毒性学」の実現が可能になった。適切な抗毒素を、適切なヘビに、そして最終的には適切な患者に合わせることができる。

フライ教授のチームはさらに、毒液遺伝子の配列解析を進め、北部と南部のイースタンブラウンスネークに見られる差異を引き起こす変異を特定している。

「毒の強さや性質の地域差は、イースタンブラウンスネークの遺伝的な分布の違いと一致していることが示された」と教授は述べる。

「我々の研究は、食性が毒の進化にどれだけ影響を与えるのかを明らかにしている。南部個体群は北部個体群より爬虫類を多く摂取するのに対し、北部は哺乳類を多く食べている。
毒液の進化の特徴と実際の症状の両方を理解することで、的確な治療を行うことができる」

※米国の独立系オンライン科学ニュースサイト「ScienceDaily」の記事からの翻訳転載である。

※本研究成果は学術誌Toxinsに掲載されている。

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