軌道を維持するための規律
感情を大局的に捉えよう。時間軸が長ければ長いほど、成功する確率は高くなる。米国株式市場で利益を上げられる確率は、以下のように、投資期間が長くなるほど劇的に高まる。
・1日 :53%
・1年 :75%
・5年 :90%
・10年:95%
・20年:98%
・25年:99%
この数学には説得力がある。難しいのは、感情が違うことを叫んでいるときに安定を保つことだ。感情の規律をマスターすることは、恐怖や貪欲が、意思決定を乗っ取るのを防ぐ仕組みを構築することであり、例えば以下のような仕組みが挙げられる。
良い行動を自動化する
毎月の投資やドルコスト平均法(定期的に一定額を投資する方法)といった、システマティックな(体系的・自動的な)投資手法を利用する。タイミングについてあれこれ論じるのではなく、ただ投資すればいい。
コミットする前のルール作り
リバランス、トリム、ポジション追加のタイミングを事前に決めておく。ルールを書きだすことで、感情任せの即興的行動が減る。
時間軸を広げる
日々のパフォーマンスをチェックすることは、恐怖心を増幅させる。ポートフォリオを数年間というスパンで見ることで、ボラティリティをノイズとしてとらえ直せる。
「もしも……だったら(What-If)」シナリオを使う
投資する前に、自分の持ち株が20~30%下落したらどう反応するかを想像しよう。メンタルリハーサルは、避けられない事態に対する回復力を養う。
これらを習慣化すると、規律として意識的に行なってきたことを、無意識に行う習慣レベルにまで昇華させることができる。
感情を強くするトレーニング
感情の規律は、体力作りと同様に、意図的で一貫した練習によって築かれる。優れた投資家は、ストレスの下でも理性的でいられるよう、次のような訓練をしている。
判断を記録する
それぞれの投資を行なった理由を記録する。後で見直して、論理と衝動を分けよう。
瞑想とマインドフルネス
呼吸法や瞑想で、神経を落ち着かせよう。意識が明晰になると、反応的な行動が減る。
説明責任のパートナーを作る
自分が客観的でいることを助けてくれる、信頼できるアドバイザーや同僚と、計画を共有しよう。
ノイズを制限する
金融メディアは、「緊急性」や恐怖を煽ることで繁栄するものだ。冷静さを保つために、情報源を厳選しよう。
時間が経つにつれ、このような習慣は、心理的な「よろい」を作り上げる。感情をなくすことはできないが、それがいつ、どのように自分に影響を及ぼすかはコントロールできる。逆説的に見えるが、感情を使いこなすとは、感情を排除することではない。感情が流れていく先を自分で決めるということだ。
鍛錬されていると、恐怖がリスク意識を鋭くする。強欲さは、うまく抑えられれば、長期的な勝者であろうとする野心を生みだす。
優れた投資家たちは、感情を欠いているのではない。彼らは、感情をコントロールする術をマスターしている。彼らは、自分の感情の引き金になるものや弱点を知っている。それを抑えることで、過剰に反応する競争相手よりも心理的に優位に立つことができるのだ。


