ロシアのエネルギーを巡る情勢に国際市場も反応
ロシアのエネルギー産業に対する制裁とウクライナによるロシアの製油所への攻撃は、国際市場にも影響を与えている。米ヤフーファイナンスに掲載された記事によると、ロシアの石油企業に対する欧米の新たな制裁の発表を受け、世界のエネルギー市場は「新たな不安定化の時代」に突入した。同記事は、ロシアの石油企業への制限が「世界のエネルギー貿易の構造的変化を加速させる」と指摘した。買い手は現在、代替案を模索しているという。
米シンクタンク大西洋評議会が23日に公表した報告書は、ロシア産原油に依存する国や企業は代替供給源に移行し「ロシアから徐々に距離を置く」可能性があると分析している。また、制裁に伴い、国際市場に出回るロシア産原油が減少することから、石油輸出国機構(OPEC)加盟国は増産を図る可能性がある。そうなれば、ロシアの国際的なエネルギー供給者としての役割は今後縮小していくだろう。これにより、ロシアは数十億ドルの輸出収入を失うことになる。
ある意味では、この動きは既に始まっている。欧州理事会は20日、2028年1月1日までにロシア産天然ガスの輸入を段階的に廃止すると発表した。これにより、ロシア産天然ガスに対するEUの輸入依存度は21年の45%から25年には19%に低下する見通しだ。こうした政策により、ロシアは数百億ドル規模の収入を失うこととなった。
欧州以外の国々もロシア産天然資源への依存度を減らし始めている。英紙ガーディアンによれば、EU、英国、米国がロシアのエネルギー産業に科した最近の制裁により、インド最大の製油所へのロシア産原油供給が即時停止した。同様に、中国最大規模の複数の国営石油企業への供給も停止された。インドと中国がこれを継続すれば、ロシアは多額の収入を失うことになる。
先述のドルバイア上級研究員は「核心的な問題は、制裁によってロシアの石油収入を実質的に減らし、同国に交渉を迫れるかどうかだ」と指摘した上で、次のように説明した。「新たな制裁には、ロスネフチやルクオイルと大量の取引を続ける(第三国の)企業への二次制裁も含まれる。ロシア産原油の最大の輸入国である中国とインドが制裁の効果を左右する鍵となる。向こう数週間から数カ月で、両国が輸入を抑制するかどうかが明らかになるだろう。インドは米国との貿易協議で有利な条件を確保できれば、ロシア産原油の輸入抑制に動き出す可能性があるが、中国がこれに従う可能性ははるかに低い。現実的には、両国とも制裁を盾に、原油のさらなる値引きをロシア側に要求するかもしれない。制裁対象原油を輸送する影の船団のコスト上昇と相まって、これがロシアの輸出収入を減少させる可能性がある」
最後に、ロシアの景気が後退しつつあるとの報告がある。インフレや制裁の影響により、ロシア経済は転換期を迎えている。制裁によるロシア産天然資源の世界的な需要減退が起これば、同国の経済はさらなる打撃を受けるだろう。
過去の対ロシア制裁は同国に数千億ドルの損失をもたらしたが、戦争を阻止する効果はなかった。むしろロシアは、西側諸国が科した制裁の効果を弱めるため、協力国や第三者仲介業者と連携した。これにより、ロシアはウクライナ侵攻を継続することができた。
今回、EU、英国、米国が新たに科した制裁はロシアに深刻な影響を与える可能性がある。ロシアがこれらの制裁にどう対応するか、また国際市場がこれにどう適応するかは、現時点では見通せない。制裁に加え、ウクライナ軍による石油精製施設への無人機攻撃の継続は、ロシアに軍事侵攻の終結を迫るには十分かもしれない。


