宇宙

2025.11.04 09:15

地球でもっとも高い雲「夜光雲」 トンガ噴火との関係を初実証

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高度80〜85キロメートルの中間圏に発生する、地球でもっとも高い雲がある。非常に高いところにあるため、夜明け前や日没後に太陽の光を受けて青白く神秘的に輝くことから「夜光雲」と呼ばれる。140年ほど前に火山の噴火との関係が指摘されたが、実証が難しくずっと謎のままだった。その関係を、日本の研究グループが世界で初めて解明した。

夜光雲が最初に観測されたのは1885年とされている。その2年前にインドネシアのクラカタウで起きた大規模な火山噴火の影響で、世界各地で普段と違う夕焼けが目撃されていたことから、夜光雲も噴火に関係があると予想された。以来、夜光雲の研究は続けられたが、大規模な火山噴火はそう起きるものではなく、火山との関係についてはなかなか観測のチャンスに恵まれず、謎は残されたままとなっていた。

しかし、明治大学、電気通信大学、国立極地研究所、東北大学、信州大学、総合地球環境学研究所などによる共同研究グループは、2022年に発生したトンガ沖の大規模な海底火山の噴火から2年後の2024年、夜光雲の活動が活発化したことを発見し、夜光雲と火山の関係を示す世界初の観測情報を発表した。

研究グループは、トンガ沖の火山噴火で吹き上げられた水蒸気の挙動に着目した。じつは2001年に、夜光雲の主成分は氷だと確認されていた。そこで、ひまわりの高感度観測データに加えて、NASAの人工衛星Auraによる水蒸気の観測データの解析を行った。

それによると、噴火時に成層圏に吹き上げられた水蒸気は、その後、大気中に広がり、2024年には中間圏に達したことが判明した。同時に、夜光雲の発生頻度が約15パーセント上昇したこともわかった。そしてさらに詳細な解析を行い、今回の発見に至ったわけだ。

今回の発見で中心的な役割を果たした明治大学理工学部の鈴木秀彦准教授は、夏に北極や南極の高緯度でのみ観測されていた夜光雲が、近年、北海道などの中緯度でも見られるようになったことから地球温暖化の影響を心配している。また夜光雲の観測は、天気予報の精度向上や環境変動の仕組みの解明にもつながるという。研究グループは、これからも夜光雲の観測を続けるとのことだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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