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2025.11.04 08:15

胃酸で発電し充電し腸内環境を監視する「デジタル錠剤」、京大と大塚製薬が開発

Getty Images

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錠剤の形をした微小なセンサーを飲むことで、胃の中の様子を外に伝えるモニタリングシステムがある。「デジタル錠剤」などと呼ばれる技術だ。すでにアメリカでは一部実用化されているが、このほど京都大学と大塚製薬の共同研究グループは、高機能なデジタル錠剤を開発した。これまで難しかった腸内環境のモニターも可能にする画期的なものだ。

現在実用化されているデジタル錠剤のなかには、胃酸を電解質として利用し自ら発電するタイプのものがある。今回の共同研究グループに加わっている大塚製薬は、アメリカのプロテウス・デジタル・ヘルスと共同開発した「エビリファイ マイサイト」というデジタル錠剤を開発し、2017年に米国食品医薬品局の承認を得て実用化している。患者が抗精神病薬エビリファイを所定どおり服用したかを外部から確認できるよう、胃酸に反応して信号を送信する微小な装置を錠剤に埋め込んだものだ。

「エビリファイ マイサイト」大塚製薬公式ホームページより。
「エビリファイ マイサイト」大塚製薬公式ホームページより。

胃酸で発電するというだけでも驚きなのだが、共同研究グループは、これに充電機能も追加した。ごく小さなコンデンサーに必要な電力を蓄えるには電圧を高めなければならず、またその電気を使う回路は動作電圧が低いため調整が必要となる。そこで無駄なく効率的に電気を使えるようにするため、数々の高度な技術的工夫が盛り込まれている。そんな、胃酸発電、電圧制御、充電、センシング、信号転送などの機能が約1ミリメートル角の微小な基板に詰め込まれている。

そのおかげで、デジタル錠剤は胃を離れても電力を確保できるようになり、これまで困難だった腸内でのモニタリングが可能となった。今回は技術実証のための「胃酸充電半導体集積回路」の開発に成功したという話なのだが、このデジタル錠剤は腸内の深部体温やpHのモニターができる。腸内環境をリアルタイムで把握できれば、腸内環境の改善や免疫機能の向上などが期待でき、健康管理の形が大きく変わる可能性がある。

今後は、さらなる高性能化を進め安全性の検証を行った後、動物実験と臨床実験で有効性の実証を目指すということだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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