米ビルボードによると、ここ1カ月の間に人工知能(AI)で生成された楽曲が続々と各チャートに登場し、中には「シンガー」としてレコード契約まで結んだ例もあるという。これらの“架空のペルソナ”が数百万回のストリーミング再生を稼ぐ新たなトレンドが、音楽業界に波紋を広げている。
AI生成によるアーティストがビルボードの複数チャートに毎週登場
この4週間、毎週必ずAI作品が新たにビルボードのチャートに登場した。たとえば今週は、ブレイキング・ラストと名乗るAIによるカントリーミュージックのプロジェクトが『Livin’ On Borrowed Time』と『Walk My Walk』という2曲をカントリー楽曲売上チャートに送り込んだ。
また先週は、AIが生み出したクリスチャン系アーティスト、ジュノ・スカイが新進アーティストチャートに初登場し、今月初めにはAIアーティストのエンリー・ブルーの『Through My Soul』がロック売上チャートにランクインした。ビルボードは、これらの楽曲がAIで生成されたものかどうかを確認するため、AI検出のプラットフォーム「Deezer」で照合したと述べている。
AI歌手ザニア・モネが4400万回再生を獲得、ラジオとチャートにも進出
最も注目を集めているAI生成の歌手ザニア・モネの楽曲は、米国内で累計4400万回以上再生されている。ただし、その楽曲自体はミシシッピ州のソングライター、テリーシャ(“ニッキー”)・ジョーンズが作詞・作曲している。
ザニア・モネは今夏のデビュー以来、すでに複数のビルボードチャートで上位に入り、R&B売上チャートでは1位も獲得した。さらに今週、AI生成アーティストとしては初めて、ラジオエアプレイチャートにも登場した。
歌声を生むAI「Suno」に著作権訴訟、学習データ使用を巡り法廷で争い
ザニア・モネの歌声は、AIプラットフォーム「Suno」で生成されている。同ププラットフォームは昨年、「著作権保有者の音源をAIの学習に利用した」として、主要レコード会社および全米レコード協会(RIAA)から訴えられた。
制作者が約5億円規模の契約を勝ち取る
ビルボードによると、ザニア・モネの生みの親であるジョーンズは、9月にレーベル「Hallwood Media」と数百万ドル規模のレコード契約を締結した。この契約をめぐる入札競争は激化し、最高額は300万ドル(約4億6000万円)にまで膨れ上がったとされる。



