研究チームは、スマートフォンで計測した骨盤の加速度データから、骨盤や下肢関節の動きを推定し視覚化する技術を2023年に開発。わずか8歩の歩行から骨盤角度、関節角度などを測定できる。
この技術を用いて同年、919人分のデータを機械学習で分析し、歩行時の身体アライメント(骨格・関節・筋肉のバランス)のゆがみの程度によって人を分類した。
そして2024年、196名を対象に慢性的な疲労度を評価したところ、身体のゆがみが少ない人は疲労度が低く、ゆがみが大きい人ほど疲労度が高いという傾向が見られた。長年「そうかもしれない」と思われてきたことに、科学的な根拠が示されたことになる。
インソールで骨盤の傾きが改善
では、この身体のゆがみは改善できるのか。研究チームは114人を対象に、インソール着用による効果を検証した。
インソール未着用時には骨盤角度が平均0.95度左右いずれかに傾いていたが、着用後には0.22度まで改善が見られた。身体のゆがみは、インソールという身近なアイテムで物理的に補整できる可能性が示された。
「姿勢が悪いと疲れる」という感覚を、多くの人が経験的に持っていた。しかし科学的な裏付けがなければ、効果的な対策は生まれにくい。今回の研究は、その感覚に根拠を与えたことになる。
研究チームは今後、身体のゆがみと意欲の低下やストレス感受性といった精神的側面との関係についても研究を進めるとしている。



