「部下を励ますつもりのひとことが、なぜか空気を重くする」。そんな経験はないだろうか。日本リスクコミュニケーション協会(RCIJ)が実施した調査では、上司の多くが「善意の声かけ」が部下を傷つけていることに無自覚であることがわかった。
【調査概要】
調査名:「無意識バイアスの指導についての意識調査」
実施時期:2025年10月
実施主体:一般社団法人 日本リスクコミュニケーション協会(RCIJ)
対象:全国の企業・団体に勤務する20〜60代の男女289名
方法:インターネット調査
悪意のない上司の指導に、部下は「傷ついている」
「直近2年間に“悪意のない”指導が部下を傷つけたと感じたことはあるか?」という質問では、管理職の半数以上が「ない・知らない」と回答した。

その一方で「直近2年間に“悪意のない”上司の指導で傷ついたことがあるか?」では、非管理職の6割が「ある」と答えた。

この結果はつまり、意図のない加害と意識された被害が同時に存在しているということだ。ハラスメントは「悪気の有無」ではなく「受け取り方」で発生する。ここに、無意識バイアスによる危うさがある。上司は善意で言っているほどそのリスクに気づきにくいのだ。
よく使うフレーズほど嫌われるリスクあり
上司がよく言いがちなフレーズのうち、部下が嫌うものについても調査されている。「うちの会社はこういうものだから仕方ないよ」との言葉を管理職の60.4%が使っており、部下の58.4%が「いやな気持ちになる」と回答した。
【図:非管理職年代別】上記のような声掛けを上司からされたらどう感じるか?(n=173)

この表現は“権威バイアス”の典型だ。組織の文化を盾に現状を固定化し、変化の余地を閉ざす。上司は説明のつもりでも、部下には「どうにもならない」と聞こえてしまう。前向きな対話のためには「今のルールの中でどう工夫できるか一緒に考えよう」などと言い換える方が望ましい。



