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2025.10.30 10:30

高市首相は日本を経済危機から救えるか? 米フォーブス編集主幹も期待

高市早苗首相。2025年10月28日撮影(Andrew Harnik/Getty Images)

高市早苗首相。2025年10月28日撮影(Andrew Harnik/Getty Images)

フォーブス編集主幹のスティーブ・フォーブスは、日本が経済停滞から脱却する助けとなり得る、高市早苗首相のサッチャー流の傾向を称賛している。他方で、フォーブスは、同首相が歴代の首相と同じ方針を追求すれば失敗に終わるだろうと警告している――。

日本の新たな、そして初の女性首相は、米国や自由主義諸国全体にも打撃を与えかねない深刻な経済危機から自国を救えるのだろうか?

就任したばかりの高市早苗首相は、英国初の女性首相である故マーガレット・サッチャー元首相の熱烈な崇拝者だ。サッチャー首相就任前の英国は、激しいインフレと重い税負担にあえぐ「欧州の病人」だった。「鉄の女」と呼ばれるサッチャー首相が1979年に就任すると、90年までの11年間のうちに、英国は世界経済のけん引役へと変貌した。同首相は減税を実施し、強い力を持っていた国内の労働組合を弱体化させ、インフレを抑制。外交面でも強硬な姿勢を崩さず、ソビエト連邦との東西冷戦では西側諸国を勝利に導いた。

高市首相も同様に、中国の増大する軍事力に対抗するため、防衛費の大幅な増額を提唱している。その上で、米国との軍事的・経済的な関係強化を望んでいる。残念ながら、同首相の経済政策はこれまでの政策の延長線上にあるものが多く、自国を危険な経済停滞から脱却させることはできないだろう。

日本は長年、巨額の政府支出と増税を続けてきた。国内総生産(GDP)に占める政府債務の割合は米国のほぼ2倍に達する。1999~2024年にかけて、日本銀行はゼロ金利政策という破壊的な政策を実施してきた。政府からの強い圧力の下、金融機関は市場価値が帳簿価額を大幅に下回る国債を大量に抱え込んだ。

日本は税負担が重い。給与から差し引かれる税の合計は32%超で、米国の15.3%を大きく上回る。さらに悪いことに、所得制限もない。米国では社会保障税の所得制限は17万6100ドル(約2700万円)だ。日本の法人税率は企業の規模に応じて最大35%近くに達する。個人所得税の最高税率は45%だ。

さらに円安も進行している。それでも高市首相は、日本がこれまで繰り返してきた悪名高い景気刺激策をまたもや推進しようとしている。

サッチャー流の減税? そんなものは忘れろ。税制改正は微々たるもので、来年には法人追加課税が導入される。高市首相はサッチャー流の強硬な経済政策を採用すべきだ。

残念ながら、不可解な理由から日本の強力な財務省は減税を嫌っており、むしろ逆を好む。同省は1990年代以降、不人気な増税を強行してきた。

日本は30年以上も低迷を続けている。新首相はその原因を把握しなければならない。そして、その卓越した政治手腕を駆使し、税率の大幅な引き下げを皮切りに、サッチャー流の改革を実現させる必要がある。

日本の長年にわたる停滞への転落は、第二次世界大戦で壊滅的な被害を受けた後の1940年代後半から80年代にかけての成果とは驚くべき対照を成している。当時の日本は体系的に減税を実施し、政府支出を厳格に抑制し、健全な通貨を維持した。その結果、驚異的な成長率を達成した。80年代後半には、欧米の報道機関は日本を「止められない経済の巨人」と描写していたほどだ。

しかしその後、日本政府はその成功の方程式を放棄し、軌道から外れた。それが今日の金融・通貨の混乱を招いている。

この衰退を食い止めなければ、影響は世界中に及ぶだろう。円通貨危機は他の主要通貨にも波及する。現在、主要通貨はすべて不安定な状態にある。債券市場も混乱に陥るだろう。政府は中央銀行に、市場で売れなくなった債券を買い取らせる誘惑に駆られるだろう。これは大規模なインフレを引き起こす確実な処方箋だ。こうした危機による地政学的影響は、ロシア、中国、北朝鮮、イランをはじめとする悪質な国々にとって、政治的な天の恵みとなる。

高市首相の成功は自由主義諸国の成功となるだろう。

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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