激化するAI競争のなかで、日本は完全にもたざる国ではないが、米中のAI覇権競争に食い込めるほどではない。ミドルパワー国家として日本はどうすべきなのか。資金、計算資源、人材が限られるなかで戦略的選択を明確にすべきだ。
例えば、計算資源と高品質データの国家的整備を優先し、米国トランプ政権下での研究費削減により大学を去るトップ研究者たちを日本に招き入れることを積極的に推進すべきだろう。国際連携では、信頼できるデータ流通や安全性評価の枠組みを主導しルールメイキングを行う。加えて、日本の基幹産業である自動車やロボティクスにおいて一刻も早く生成AIベースの応用技術を米中のレベルに引き上げることである。
技術が大きく変わるなかで日本の基幹産業は大きな岐路に立っている。さらに言えば、AIは単なる産業技術ではない。国家の意思決定速度、社会のレジリエンス、そして民主主義の質をも左右する。技術は中立であっても民主主義国家と権威主義国家では統治者のAIの使い方は異なることだろう。日本はリベラルな民主主義国家として同志国との連携とともに戦略的自律性と不可欠性を高める必要がある。今後は権威主義国家のAIによる統治が進む可能性は否めない。日本は技術と規範で民主主義国家としての価値観に基づき、AI時代の国際秩序構築に貢献すべきである。
塩野 誠◎研究主幹/新興技術グループ・グループ長。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、ワシントン大学(セントルイス)ロースクール法学修士修了。内閣府知的財産戦略本部 構想委員会委員、人工知能学会倫理委員会にて倫理指針(2017)の起草に参加。国際協力銀行スタートアップ投資委員会委員など兼職多数。IOG創設時より研究者として参画。


