イスラエル発のベンチャー投資プラットフォーム「OurCrowd」(アワクラウド)は、世界195カ国の24万人超の登録会員から26億ドル(約3978億円。1ドル=153円換算)の投資コミットメントを集めてきた。特徴は、未公開のスタートアップ企業に1万ドル(約153万円程度の小口から投資できる点で、富裕層など規制上の「認定投資家」だけが早い段階で成長企業に入れるという従来の米国型のルールを個人側に引き寄せたところにある。
創業者ジョン・メドベッドがCEOから会長に移ると公表されたことで、同社が掲げてきた「ベンチャー投資の民主化」は次の段階に進める局面に入った。現在米国では、多くの有力テック企業が長く未公開のまま巨額の評価額を維持し、個人投資家の目に触れる前に価値成長の大半を終えてしまう構造が定着しつつある。OurCrowdはこの閉じた非公開市場(プライベート・マーケット)への入り口を個人側に開き、イスラエルとシリコンバレーを軸にサイバーセキュリティ、AI、医療などの分野へ資金と人材ネットワークを流し込んできた。
本稿では、なぜ個人マネーが未公開市場に入れるようになったのか、イスラエル発スタートアップの資金流入が戦時下でも鈍らない理由、そしてOurCrowdが次の10年で何を切り口に「10倍成長」を狙うのかを見ていく。
成功の要因は、重要トレンドの見極めと社会的インパクト重視
創業者ジョン・メドベッドが19日のインタビューで明かしたのは、OurCrowdを成功に導いた要因だ。彼によると、「ベンチャー投資家向けのガイドブックの章立てとしても使えるほど明確だ」という。それは、「成長の初期段階にある重要トレンドを見極めて、有望な分野を的確に狙う」というアプローチをとりつつ、社会的インパクトを重視し、世界のコミュニティに貢献し、人材に投資することだ。
会長として、会員や投資家によるコミュニティの質的向上に注力
今後メドベッドがOurCrowdの会長として力を注ぐ領域は、「人々の交流」になる。「私たちにはコミュニティ形成を強化する必要がある」と語る彼は、単にメンバーの数を増やすだけでなく、「エンゲージメントの質を高める」ことに注力していく構えだ。
OurCrowdは現在、世界5大陸にまたがる500社のスタートアップと68のファンドを投資先としている。メドベッドは、1万ドル(約153万円という少額から投資できる仕組みを持つ同社の会員や投資家が今後、より一層「影響力を持つ存在」として活躍できるようになるべきだと考えている。「彼らの力は特に、投資先のスタートアップが上場する局面で重要だ」と彼は語った。



