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2025.10.30 18:00

未公開スタートアップへの投資を個人に開放、イスラエル発OurCrowdが目指す次の10年

OurCrowd創業者兼会長のジョン・メドベッド(写真左)とCEO兼最高執行責任者(COO)となったカリ・チル(同右)(C)OurCrowd

インパクト投資の好例、社会的意義と収益性を両立する投資

フードテックへの投資は、OurCrowdの強みでもある「インパクト投資」の好例ともいえる。社会的意義と収益性の両立を目指すOurCrowdのインパクトファンドは、「社会に前向きなインパクトを与えて、利益を得る」ことを投資家に約束している。

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具体例としては、世界の医療格差是正を目指す2億ドル(約306億円)規模のインパクト投資ファンドの設立や、社会・医療・環境の各分野で成果を上げるスタートアップへの出資が挙げられる。この分野の投資先には、「UPnRIDE」「Intuition Robotics」「CropX」などがある。

「UPnRIDE」は、車椅子利用者が立ったまま移動できるモビリティ機器を開発しており、「Intuition Robotics」は高齢者向けロボットコンパニオンの開発を手がけている。「CropX」は、灌漑の最適化によって水使用量を最大50%削減し、農薬使用を20%抑え、80種類以上の作物で収量を20%以上向上、結果として温室効果ガス排出9〜13%削減するという農業管理プラットフォームだ。

「人々を動かし、投資を広げるためには、単に収益の見込める投資だけでなく、“社会に良い影響を与える投資先”を確保する必要がある」とメドベッドは語った。

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創業時からグローバル展開、ポートフォリオの半数は海外企業

一方、営利目的であれ社会的意義であれ、OurCrowdは創業当初から「地球規模の課題」を投資対象としてきた。エルサレムを拠点とする同社のもう1つの成功要因は、「創業時からグローバルであったことだ」とメドベッドは語る。PitchBookのデータによれば、OurCrowdは2013年の設立以来、毎年「イスラエルで最も活発なベンチャー投資家」に位置づけられているが、現在ではポートフォリオの約半分が海外企業で占められており、その数は数百社にのぼる。同社のグローバルな投資先・エクスポージャーにはアンソロピック、スペースX、データブリックスといった有力スタートアップが含まれる。

「私たちは、居住国の認定投資家の基準を満たしていれば、比較的小口の資金でもこうしたディールに参加できる仕組みを提供している」とメドベッドは説明する。OurCrowdが提供する非公開市場の投資機会には、厳選されたスタートアップに加え、独占的なベンチャーファンドやベンチャーデット(スタートアップ向けの融資)、プライベートエクイティ、世界各地のアクセス困難なオルタナティブ資産クラスも含まれている。

最も重要な成功要因は「人への投資」、社内からの人材登用と育成を推進

そして最後に忘れてはならない、最も重要な成功要因が「人への投資」だ。「私たちは社内から優秀な人材を育て、次のステップへと送り出す“人材の育成者”であり、推進者でもあった」とメドベッドは語る。「多くの社員が自らのキャリアを築き、自分のファンドや会社を立ち上げてきた」。その代表的な例がカリ・チル、OurCrowdの新たな暫定CEO兼最高執行責任者(COO)だ。チルは7年間にわたり、法務オペレーション、ファンド運営、投資戦略などの要職を歴任し、直近では最高投資責任者(CIO)兼投資委員会の議長を務めていた。

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翻訳=上田裕資

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