個人投資家のニーズに応え、未公開市場へのアクセスを民主化
またメドベッドは、OurCrowdが24万人もの投資家を集められた理由は、「未公開企業へのアクセスを求める個人投資家のニーズにフォーカスしたからだ」という。「近年は、多くの企業が上場できない、あるいはあえて上場しないまま、未公開の状態を長く続けるという市場の構造的な問題が生じていた」とも語る。
2013年に始動したOurCrowdは、他社に先駆けて個人の「認定投資家」がスタートアップに直接投資できるプラットホームを確立した。OurCrowdはこのニーズをいち早く捉え、最大限に活用した。同社は、未公開のまま成長を続けるスタートアップが増える中で、個人投資家に非公開市場へのアクセスを与えている。「このトレンドは今や津波のような規模になっている」とメドベッドは言う。現在、世界には約1600社のユニコーンが存在し、その総資産は7兆ドル(約1071兆円)を超えている。
新興企業のトレンドを捉え、エコシステムを活用
OurCrowdは近年、「スタートアップ立国」として台頭したイスラエルの新興企業のトレンドを的確に捉え、そのエコシステムを活用した。「イスラエルのエコシステムには、まさに奇跡のような力がある」とメドベッドは指摘する。起業家・投資家として40年間この分野に携わってきた彼にとっても、「過去10年間は信じられないほどの変化だった」という。
世界的なパンデミックや戦時下の不安定な状況を経ても、イスラエルのテック系スタートアップの勢いはほとんど衰えていない。Startup Nation Centralのデータによれば、同国の新興企業が2025年の第3四半期までに民間から調達した資金の総額は119億ドル(約1.8兆)に達し、前年同期比で13%増加した。M&Aによるイグジット総額も410億ドル(約6.3兆円)と、2024年の3倍に膨らみ、イスラエル史上最高を記録した。
テルアビブ市場の株価指数は、戦争の開始から今年9月末までに約50%上昇し、世界の主要株式市場の中でも際立った伸びを示している。「イスラエルには圧倒的な技術力と起業家精神がある。この国のエコシステムは現在、シリコンバレーに次ぐ規模となっている」とメドベッドは語った。
投資先の見極め
OurCrowdの成功を支えた要因の1つは、「投資先の見極め」だ。「もちろん、タイミングを誤ったこともあるし、失敗も経験してきた」とメドベッドは認める。それでも全体として同社は、「正しい投資テーマ」への投資機会を与えており、そこには、サイバーセキュリティや半導体、フィンテック、そして近年ではAIなどが含まれる。
一方で、「失敗」した投資の多くは、テクノロジー業界に特有の浮き沈みや過熱・幻滅のサイクルに巻き込まれたケースだった。その中の1つの「モビリティ」分野は、一時期勢いを失ったが、最近になって再び魅力を取り戻しつつある。もう1つの例が「フードテック」だ。この分野の調達額は2021年のピークからは減少したものの、OurCrowdは73件のイグジットの1つであるBeyond Meat(ビヨンド・ミート)への投資で成功を収めた。


