2週間前、筆者は中国の「一帯一路」構想はトロイの木馬のようなものだと書いた。そのときは比喩的な意味でそう言ったのだが、中国政府が新たに打ち出したレアアース(希土類)管理強化策を見れば、その比喩は文字どおりの意味を帯びてきたように思える。
ネオジム、ジスプロシウム、サマリウム、テルビウムといった聞き慣れない名前をした17種類のレアアース元素は、現代の世界を支え、動かす力の源泉だ。電気自動車(EV)のモーター、F-35戦闘機の誘導システム、iPhoneのレンズ、あるいは病院のMRI(磁気共鳴画像装置)にも使われている。レアアースがなければ21世紀の経済は成り立たないと言っていいだろう。
中国は数十年にわたり、長期的な視点からレアアースの開発を進めてきた。1990年以降、西側諸国が環境面の懸念や短期のコスト圧力に気を取られ、開発に二の足を踏むのを尻目に、中国は採掘と精錬に資金をつぎ込んできた。
その結果どうなったか。米銀ゴールドマン・サックスによると、中国は現在、世界全体のレアアース採掘の約70%、精製の92%、磁石生産に至っては98%ものシェアを握っている。
中国のレアアース産業は国有企業3社が支配する。中国の年間生産のおよそ7割を占めるのが、内モンゴル自治区の包頭市に本社を置く中国北方稀土集団だ。競合する中国稀土集団は、重希土類の生産を一元化し、中国の価格支配力を高めるため、2021年に複数の国有企業を統合して設立された。両社と、国内生産の1%を担う厦門タングステンを加えた3社によって、中国は一国で“戦略金属版OPEC(石油輸出国機構)”のような存在になっている。
エコノミック・ステイトクラフト
中国は過去にもレアアース輸出を制限したことがあるが、今月公表した規制はかつてなく広範なものだ。12月1日から、中国産レアアースが価格の0.1%超含まれる製品を輸出する場合、企業は政府の許可を申請しなければならない。



