さらに重大なのは、採掘法であれ、精錬設備であれ、あるいは磁石の製造方法であれ、中国のレアアース関連技術を用いた一切の製品も同様の制限を受けることだ。
この新規制は、外国の防衛関連企業とつながるあらゆるサプライチェーン(供給網)を事実上、遮断できるようにするものでもある。言い換えれば、中国政府はいまや、米国の最先端兵器に使用される物資の流通を差し止めることが可能になったということだ。
たとえばF-35にはレアアースが400kg以上使われている。つまり、米軍の主力戦闘機は、米国の最大のライバル国が支配する物資に一部依存してしまっている。
中国はグリップを強めることで、一発の銃弾も発射せずに戦略産業を締め上げることができる。中国は2010年にもこの手口を用いており、海上紛争をきっかけに日本へのレアアース輸出を停止した。
米政府はMPマテリアルズに出資
ゴールドマン・サックスは最近、レアアースの供給が10%途絶えた場合、世界全体の生産が1500億ドル(約23兆円)失われる可能性があると試算し、半導体からEVまであらゆる分野にショックが広がるおそれがあると警鐘を鳴らした。レアアースのなかでもとくに輸出規制の対象になりやすいものとして、サマリウム、テルビウム、ルテチウムを挙げている。
投資家も中国の動きを注視している。新たな規制の公表以来、豪シドニー市場や米ニューヨーク市場でレアアース関連銘柄が大幅に上昇している。豪ライナス・レアアースズ、豪イルカ・リソーシズ、米国唯一の大規模レアアース採掘企業であるMPマテリアルズなどが牽引する。
幸い、今回は米政府も手をこまねいてはいない。米国防総省(戦争省)は7月、MPマテリアルズの株式15%を4億ドル(約610億円)で取得した。あわせて同社のネオジム・プラセオジム磁石製品について、下限価格を設けるとともに防衛サプライチェーン向けの買い取りも保証した。国防総省は現在、MPマテリアルズの筆頭株主になっている。
政策は変化の前触れ
米国のドナルド・トランプ大統領とオーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は今月、重要鉱物やレアアースの安定供給の確保に向けた2国間の枠組み協定に署名した。米豪は精錬能力の強化や中国依存の軽減のため、短期資金としてそれぞれ少なくとも10億米ドル(約1520億円)を両国内のプロジェクトに融通することにしている。


