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2025.10.29 18:00

米政府とAMDが1500億円規模のパートナーシップ締結──「10億ドル超」AI投資ラッシュ

AMD会長兼CEOのリサ・スー(Photo by David Becker/Getty Images)

相互出資と相互契約が重なり、資金と案件が同一企業群を行き来する構図

AI企業の多くは、長年にわたり相互に出資し合うことで密接に結びついてきた。その始まりは、2019年7月のマイクロソフトとOpenAIの株式取引にさかのぼれる。このときマイクロソフトは、OpenAIに10億ドル(約1520億円)を出資した。2023年1月にはこの提携が拡大し、マイクロソフトの出資額は約140億ドル(約2.1兆円)に膨らみ、同社はOpenAIに独占的にクラウドインフラを提供していた。

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アマゾンは、2023年9月にアンソロピックへ最大40億ドル(約6080億円)を出資し、2024年11月にも同額を追加出資した。グーグルも2023年10月にアンソロピックに20億ドル(約3040億円)を拠出し、今年初めにも10億ドル(約1520億円)を追加した。

ソフトバンクは2025年、OpenAIの400億ドル(約6.1兆円)規模の資金調達ラウンドを主導した投資家の1つとなり、8月にはエヌビディアに20億ドル(約3040億円)を投じた。エヌビディアは翌月、インテルに50億ドル(約7600億円)、OpenAIに1000億ドル(約15.2兆円)を出資した。

一部の経済学者は、AI企業同士の複雑な資本関係が1990年代末のドットコムバブル期に見られた相互出資構造に似ていると警鐘を鳴らし、「企業間の資金循環が市場を過剰に膨張させている可能性がある」と指摘している。クラウドインフラ企業コアウィーブの時価総額は、3月の新規株式公開(IPO)以降に約670億ドル(約10.2兆円)に急増した。過去6カ月で株価を221%上昇させた同社は、複数の企業と提携を結んでいる。

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マサチューセッツ工科大学(MIT)の調査によれば、投資総額4000億ドル(約60.8兆円)にのぼる300件のAIプロジェクトのうち、95%が黒字化していないという。

また、一部の調査機関は、AI分野への巨額投資の多くがまだ成果を上げていない点を指摘する。マサチューセッツ工科大学(MIT)の調査によれば、投資総額4000億ドルにのぼる300件のAIプロジェクトのうち、95%が黒字化していないという。

世界のAI支出見通しと電力・データセンター投資規模

投資銀行UBSの予測によると、2025年末までの世界全体のAI関連支出は、3750億ドル(約57兆円)に達する見通しだ。同行は、AIへの年間支出が2026年には5000億ドル(約76兆円)に拡大し、電力需要の増加に伴うエネルギー関連支出が2030年までに年間3兆ドル(約456兆円)を上回ると見込んでいる。また、コンサルティング会社マッキンゼーの推計では、企業によるデータセンターへの累計支出は2030年までに6兆7000億ドル(約1018.4兆円)に上り、その大半がAIチップを中心としたシステム構築に充てられるという。

「AIバブル」領域にあるのか? その崩壊はあるか

エコノミストは、AI投資の流れが世界市場を揺るがしかねないと警告しており、現在の市場環境を2000年のドットコムバブル崩壊になぞらえる声もある。バンク・オブ・アメリカが今月発表した調査によると、投資家の約54%が「AI関連資産はすでにバブル領域にある」と回答している。AI関連銘柄が本来の価値を上回って買われ、「急落のリスクを抱えている可能性」が示唆された。

シンガポールの政府系ファンドGICの最高投資責任者ブライアン・ヨーは、AI関連のスタートアップの調達額が過去最高に達しており、「AIを名乗るだけの企業が過大評価されている」と指摘した。

フォーブスは、OpenAIのChatGPTやxAIのGrokなど複数のAIチャットボットに「AIバブルが起きているか」と質問した。GrokとChatGPTはいずれも「バブルが起きている」と回答し、PerplexityとMicrosoft Copilotは「その兆候がある」とした。メタのMeta AIとグーグルのGeminiは「バブルと断定するのは議論の余地がある」と答えた。多くのチャットボットは「投資家の熱狂は持続不可能なレベルにある」と指摘する一方で、テクノロジーそのものやAI関連製品に問題があるわけではないと付け加えた。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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