また、航空宇宙工学を学んだ後にデザイナーとして世界で活躍する吉本英樹は、「伝統文化を紡いでいる皆さんへの憧れと尊敬の念をいだきながらこれまで仕事を続けてきた。そんな中で受賞できたことが本当に光栄に思う。これを励みにさらに精進したい」と感謝を述べた。
受賞者は一組ずつ登壇し、京都市の地域産材ブランドの「みやこ杣木(そまぎ)」を使ってつくられた記念の盾を受け取り、それぞれに受賞の喜びや今後の展望を語った。
京都市が選出した「京都市特別賞」は、一般社団法人ツーリストシップ代表理事の田中千恵子に贈られた。田中は大学在学中に起業し、観光客と地域住民による文化の相互理解と尊重を軸に、「ツーリストシップ」という概念を提唱。旅先に配慮し、地域に貢献しながら交流を楽しむ旅行者としての姿勢や行動のあり方を広めるべく活動を展開している。
プレゼンターの松井市長は「ツーリストとまちの人が嫌悪関係になるのは悪循環で相互尊重が大原則。行政が上から目線で規制するのではなく、大好きな京都の価値を自分たちで守っていこうという概念を発信していることが素晴らしい」と称賛した。協賛の東京建物が選出した「YNK賞」は、J-CATの飯倉竜に贈呈された。
固定概念を超える“仕掛ける力”
授賞式に続いて、キーノートセッションが行われた。テーマは「仕掛ける力―日本発カルチャーの可能性」。歌舞伎俳優の中村壱太郎、“仕掛け番長”と呼ばれるIP書店プロデューサーの栗俣力也、尾州の繊維産業を担う三星グループ代表の岩田真吾、編集長の藤吉の4人が登壇した。
藤吉は冒頭、「抹茶や茶器など、日本人が気づかぬ文化価値を、海外の人たちが見出してビジネスにしているのが現状。今求められているのは、日本文化の真の可能性を市場に届ける“仕掛ける力”ではないか」と投げかけた。
登壇者にそれぞれの事業の原点をたずねると、中村は「コロナ禍で表現の場を失い、『今できる文化の形』を考えてART歌舞伎を始めた。“できないことがあるからこそできることがある”ことに気づいたのが出発点」と回答。書店を主戦場にする栗俣は、「作家や編集者とともに企画を立て、漫画や小説好きの“オタク”がリアルで力を発揮できる書店をつくりたかった。仕掛け方次第で、まだまだ売れる要素があると感じている」と述べ、岩田は「100年企業の5代目のアトツギとして、この会社をお金という軸だけでなく、“おもしろい”を軸にアップグレードしたいと思ったことが原点」と語った。
「固定概念を破ることで新しい価値を生む」という3人の共通点が見えてくると、栗俣は「出版社が売りたいものを売る従来の書店ではなく、クリエイターと共に企画から作品をつくり上げる。それが私の考える“押し出し方”です」と続けた。その言葉を受け、岩田は自社のウールリネンのデニムスーツを紹介。「ウールは冬の素材と思われがちですが、実は一年中快適に過ごせる。真夏でも着ています」と話し、素材の常識を覆したことが成功に繋がったと話した。


