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パイロット——世界1位ブランドのIR改革

藤吉:ポートフォリオの中に万年筆のパイロットが入っているのも興味深いです。

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川部:フリクションペンで有名ですが、パイロットは筆記具業界でグローバルシェア第2位という世界規模の会社なんです。1位はパーカーなど複数ブランドを持つNewell Brandsですが、単一ブランドでは世界No.1の売上を誇るメーカーです。

阿部:海外売上比率が約8割だよね。で、100年以上の歴史があってブランドの認知度も高く、品質が圧倒的にいい。世界ではボールペンといったらパイロットなんです。

藤吉:フリクションペンも、もともとはヨーロッパで大ヒットしたのを日本に逆輸入したんですよね。製造業の人たちが「日本のボールペンは世界最高の品質だ」と言うのを聞いたことがあります。海外メーカーのだと、インクがかすれて書けない、と。

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川部:中国とかインドとかだと紙の質もあまりよくないので、粗悪なボールペンで強く書くと紙が破れちゃうんですね。だから高品質なパイロットが選ばれると考えています。

藤吉:逆に改善余地というか、スパークスさんとしてエンゲージメントしたい部分というのはどこなんでしょうか。

川部:パイロットの場合、株式市場との対話に改善余地がありました。というのもこの会社、最近まで決算説明会をやっていませんでした。IR専属チームもなくて、最初のころは我々がIRについて問い合わせても、総務部に繋がるので、なかなか的確な答えが返ってこないという状況でした。

藤吉:上場企業では珍しいですよね。

川部:ええ。なので我々としては「もっと株式市場と対話しましょう」ということを、経営陣にしつこく言い続けたわけです。それで最近、IRチームができて、初めて決算説明会をやって、株式市場と対話を始めたというところです。

“市場と対話する”ことの意味

藤吉:いくらいい会社でも株式市場に認知されないと意味がないわけですね。同じように高品質でブランド力もあるのに市場に向けては何もやってないという会社は日本には多そうですね。

阿部:そういう日本企業は顧客満足度は高いし、従業員にも老舗で働いているという誇りがあるし、財務もいいから銀行はハッピー。でも株主はステークホルダーとは看做されなくて、「なんか蚊がよってくるな」みたいな扱いをされてしまう。

ただ手前味噌な言い方になるけれど、うちの運用マネージャーはみんな誠実、熱心、的確に対話するので、通っているうちに信用されて「役員会で話してください」と言われるようになるんです。

藤吉:まさにスチュワードシップですね。パイロットは、ずっと業績いいんですよね。このスマホの時代になぜ筆記具の会社が、とちょっと不思議だったんですけど。

阿部:万年筆なんかは欧米では一種の嗜好品として扱われてきた歴史がありますよね。その意味で近年所得があがってきたインドとか中国では、むしろこれから高機能・高品質な筆記具への需要が増えてくるんじゃないかな。

川部:100年後はともかく、当面はそっちのスピードの方が衰退よりも速いだろう、と。それに大きなトレンドとして今後衰退が確実と思われる業界ほど真剣に生き残りを考えているという面も大きいと思います。 

阿部修平
阿部修平 スパークス・アセット・マネジメント代表
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text by Hidenori Ito/ photograph by Kei Onaka

連載

市場の波に乗る12の視点 スパークス代表・阿部修平×Forbes JAPAN 編集長・藤吉雅春

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