Good to Greatを現場でつくるためのエクイティストーリー

知られざる優良企業は「対話」から見出すことができる。トヨタ、ユニクロ、セブンイレブンの「強み」をいち早く見出した投資家・阿部修平(スパークス・アセット・マネジメント代表)と語る、市場との対話の方法。


藤吉雅春(Forbes JAPAN 編集長):ここからはスパークスの「スチュワードシップファンド」のポートフォリオに入っている銘柄について、少し具体的にうかがえればと思います。この15銘柄のなかで川部さんにとって特に印象的な企業はありますか?

川部正隆(スパークス・アセット・マネジメント 運用調査本部 チーフアナリスト):私にとってはどれもそれぞれに大切な役割のある“仲間”ですので、どれが一番ということはないのですが、今、チームとして自信を持っているところでいえば、「SHOEI」というヘルメットを作っている会社です。

藤吉:なぜヘルメットなんだろうと気になってました。

川部:実はフルフェイスのプレミアムヘルメットというのは、世界的に日本企業がほぼ独占していて、世界シェアの60%をこのSHOEIが占めています。あとはアライとカブトというやはり日本企業が分け合っている状態なんです。

阿部修平(スパークス・アセット・マネジメント代表):SHOEIはROEも20%を超えているんだよね。

川部:そうです。高いシェアと高い収益性を持っている素晴らしい会社なんですが、今現在は中国や欧州の景気が停滞している中で、短期的に業績が下がっており、株価も下落しています。そこで我々の出番かな、と考えています。

藤吉:具体的にはどういうエンゲージメントをされているのでしょうか。

川部:この会社がもったいない点は、バランスシートの約4割が金融資産で占められていることなんです。キャッシュフロー創出能力が非常に高く、しかも短中期的に必要な大型設備投資は既に完了していると分析していますので、このままだとどんどん金融資産がたまっていく。そこをアクティビストに狙われる可能性もあります。

ですから我々としては、新たな成長投資や株主還元の強化で、滞留している金融資産を効率的に活用して、企業価値を上げていきましょうという提案をしています。

阿部:結局、企業価値を上げて、株価を高くすることが買収防衛策になるんです。

藤吉:そこにもこのファンドの意義があるんですね。

阿部:SHOEIの社長さんにも、対話を重ねる中でそのことをご理解いただけるようになりました。3、4年前に最初に我々が話にいったときと今では、全然態度も違う。最初は正直「今でも十分儲かってるのに何しにきた?」みたいな感じでしたから(笑)。

次ページ > パイロット——世界1位ブランドのIR改革

text by Hidenori Ito/ photograph by Kei Onaka

連載

市場の波に乗る12の視点 スパークス代表・阿部修平×Forbes JAPAN 編集長・藤吉雅春

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事