なぜ“集中投資”になるのか——エンゲージメント・ウォッシュを超えて
藤吉:今、御社の「スパークス・日本株式スチュワードシップファンド」は約15銘柄で構成されていますね。広く分散投資をするのではなく絞った銘柄に集中投資する理由はなんでしょうか。
川部:エンゲージメント戦略、それからスチュワードシップコードにおいて、これを徹底的にやろうとすれば、すべからく集中投資になると思います。一時期、多くの運用会社が「ESGに取り組んでます」と謳っていましたが、その実態は〝ESGウォッシュ(ESGを装っている)〟ではないか、と懸念されたことがありました。同じように、見せかけのエンゲージメント・ウォッシュも出てくる懸念があります。
藤吉:エンゲージメント・ウォッシュという言葉があるんですか? 〝グリーンウォッシュ(見せかけの環境配慮)〟のような……。
川部:これは私が作った言葉ですが、ちょっと企業に対して何か喋っただけで「エンゲージメントしてます」というようなケースですね。というのも一般的な投資信託は100銘柄以上に分散投資しているケースがありますが、たいていファンドマネージャーは1人しかいません。その1人が100社にリサーチをかけて、深く対話していくのは、現実問題として難しいですよね。
もちろん大人数のアナリスト部隊を抱えているという話だと思いますが、それでも意思決定をするのはファンドマネージャーです。だからエンゲージメントをしっかりやっていこうと思ったら、必然的に集中投資になっていくというのがまずあります。
またエンゲージメントにおいて最も大切なことは、企業からの信頼を得ることです。ではどうやってその信頼を得るかといえば、「現地現物」の深い分析に基づいた対話が必要になってきます。そこまでやって初めて企業から見て「会いたいとは言わないまでも、会って意味のある投資家」と認識してもらえる。ですから1社1社にかけるリソースはとても大きくなりますし、結果的にそれが高い投資リターンに繋がると考えています。
藤吉: 対話というのは具体的にどういうことを話すのでしょうか?
川部:私の理解では、一般的なアクティビストというのは「Bad to Nomal」で、課題のある会社を株主権の行使によって普通の会社にすることでエグジット(資金回収)します。対して我々のファンドは「Good to Great」、優良企業をさらに素晴らしくするという発想でやってます。アクティブファンドとして長期投資に値する優良企業を発掘し、その上で「こうすればもっと良くなるのに」という論点について、対話を通じて企業価値向上を促して検討していく感じです。
藤吉:そうするとかなりコンサル的な支援に近くなりますよね。
川部:ただ、ビジネスそのものはやはり企業の方々の方が詳しいわけです。一方でバランスシートや事業ポートフォリオ全体で見たときの収益性、IRの見せ方など我々が得意とする領域がありますので、そこをサポートしていくイメージです。あるいは例えば社長が会社を変革したいと思っていても、社内の関係性のなかでなかなか難しい場合に、その変革の方向性が正しいのなら、我々が株主としてそれを支持するという役割もあります。


