親ノミのすぐ近くに居続けることで、次世代のノミたちは、自分たちの環境を脱却できなくなる。
しかし、1匹のノミを瓶から取り出し、もっと大きな瓶に入れてみよう。すると、もっと高く飛ぶノミたちに囲まれて、そのノミも適応するようになる。
そのノミの行動を抑制していた古いルールは、新しいルールに取って代わるのだ。
こうした新しいルールは、ノミが持つメンタルモデルのみならず、遺伝子構造さえも変容させることになるだろう。
このノミの話は、生物学や遺伝学の従来的な理解に反するものではあるが、新しい科学である「エピジェネティクス(後成遺伝学)」の観点から見ると、よく理解できる。
著名な生物学者のブルース・リプトン博士は話す。
「私たちはかつて、突然変異遺伝子ががんを作ると思っていた。しかしエピジェネティクスによって、それがすべて変わってしまった」
リプトン博士はさらに、自分の研究がいかにしてエピジェネティクスを解明したか、そして人となりを作っているのはその人の遺伝子だけでないのはなぜか、次のように説明する。
細胞は「培養皿」次第で骨や筋肉に分化する
「培養皿に幹細胞をひとつ入れたところ、幹細胞は10時間ごとに分裂した。2週間後、培養皿の細胞は数千にも達していた。それはみんな同じ親細胞から派生したものなので、遺伝子的にはまったく同じだ。その細胞集団を分割し、3つの培養皿に植えつけた。次に私は、それぞれの培養皿の培地(細胞にとっての「環境」)に手を加えた」
この後、非常に興味深いことが起こった。
環境を変えただけなのに、まったく同じはずだった細胞は、自らをそれぞれ違う形で表現したのだ。
リプトン博士は次のように話す。
「ある培養皿の細胞は骨になった。別の皿は筋肉、また別の皿は脂肪になった。これは、細胞の運命を決めるのは遺伝子ではないことを示している。細胞はすべてまったく同じ遺伝子を持っていたのだから。遺伝子配列ではなく、環境が細胞の運命を決めたのだ。つまり、健康的な環境にいれば、細胞は健康ということだ。不健康な環境にいれば、細胞は病気になる」
端的に記せば、人が何者になるかは、どんな遺伝子かよりもどの遺伝子が表現されたかに大きく依存するということをエピジェネティクスは示している。
そして遺伝子の表現は、環境の信号と選択に大きく依存する。
人の生態とは「変わることのない決まったもの」ではなく、「非常に流動的で影響を受けやすいもの」ということだ。
とてもワクワクするし、勇気がもらえる話だと思う。
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