「時間感覚がズレてしまうのは、なぜなのか?」
発達障害の特性を持つ人が抱える悩みの一つだ。「まだ時間がある」と思っていたはずなのに、気づけば締め切り直前。この「時間のワープ」は、意志の弱さではなく、脳の特性による。ただ、時間感覚のズレを抱えながらも、適切な工夫によって締め切りを守れるようになることはある。ポイントは「残り時間」を別の概念に置き換えて楽しむこと。
障害者の社会復帰を支援し、YouTubeチャンネル「発達障害しごとラボ」を運営する柏本知成さんの著書『ポストが怖くて開けられない! 発達障害の人のための「先延ばし」解決ブック』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けする。
※登場する人物の名前はすべて仮名です。個人情報保護のため、一部の属性や状況についても変更しています
数字ではなく"路線図"で時間をつかまえる
「まだ時間があると思ったはずなのに、気づけば提出5分前──」
このように、時間がワープしたような経験が、あなたにもあるかもしれません。
就労移行支援事業所に通う大野ミユキさん(20代女性)は、企画書作りの訓練が得意です。しかし、締め切りが絡むと時間感覚が狂います。
ある日の朝、課題を受け取ったときには、
「3日後の15時までに提出? 余裕だね」という感じです。
ところが前日の夕方、まだタイトルすら入っていない。そして、提出の当日14時55分。「あと5分!?」と、あわてて送信ボタンを押すのが、いつものパターンでした。
彼女が口にしたのは、こんな感覚です。
「締め切りって〝遠い数字〟に見えると、ぜんぜん手がつけられなくて後回しにしちゃって、いつもギリギリ」
そこで、ミユキさんがゲーム好きということで、「時間を距離に置き換えよう」と提案しました。
まず横にしたA4用紙に1本の直線を引き、左端を出発駅(いまの時間)、右端を終点駅(締め切り)に設定。
18時まで残り8時間だったので、線を8等分し、1駅=1時間の路線図を作ります。



