欧州

2025.10.29 08:30

ウクライナ軍が無人機を駆使して東部の村を奪還 ロシア軍の戦略的欠陥が露呈

ロシア占領下のドネツィク州上空を飛行させるため、偵察無人機(ドローン)の発射準備を行うウクライナ軍兵士。2025年9月21日撮影(Scott Peterson/Getty Images)

ロシア占領下のドネツィク州上空を飛行させるため、偵察無人機(ドローン)の発射準備を行うウクライナ軍兵士。2025年9月21日撮影(Scott Peterson/Getty Images)

ウクライナ軍は22日、8月中旬からロシア軍の占領下にあった東部ドネツィク州の村クチェリウヤルを奪還した。ウクライナ空挺部隊はソーシャルメディア(SNS)上で、約50人のロシア軍兵士が降伏する様子を映した無人機(ドローン)映像を公開した。別の映像では、解放された同村でウクライナ軍兵士が国旗を掲げる様子を確認することができる。

advertisement

クチェリウヤルの奪還は、ドネツィク州の主要都市ドブロピッリャ周辺地域の支配権確保に向けた極めて重要な動きであり、ウクライナ兵の士気を大きく高める成果となった。一方、ロシア側では占領した地域を維持する能力が低下しているという事実が浮き彫りになり、同国の現在の戦略の根本的な弱点が露呈することとなった。

ウクライナの「殺人区域」と前線防衛

3年半に及ぶ消耗戦の末、約1000キロに及ぶウクライナの防衛線は手薄になっている。人員と装備が限られる中、ウクライナ軍は防衛線の特定区間の守備を優先せざるを得ない状況だ。強化された区間さえも、繰り返されるロシア軍の攻撃によって徐々に消耗している。

こうした状況にもかかわらず、ロシア軍の戦果は最小限にとどまっている。その主な要因はウクライナの無人機だ。ウクライナは技術水準を高めながら、新たな一人称視点(FPV)無人機や光ファイバー無人機の製造を急速に進めている。

advertisement

これらの無人機はウクライナ軍陣地の前方に「殺人区域(訳注:戦場で多くの死者が出る地帯)」を形成し、前進するロシア軍を監視している。敵を検知すると、無人機は直接攻撃するか、砲兵部隊に目標座標を伝達する。この殺人区域は装甲車両や大規模な陣形を阻止できることが実証されている。

ロシア軍の地上攻撃戦略

殺人区域は大型の機械化部隊に対しては有効である一方、徒歩部隊やオートバイなどの小型車両を使用する小規模な集団に対しては効果が小さくなる。特に森林地帯や市街地など、無人機の能力が制限される地域を移動する場合、こうした部隊の検知や標的化が困難になる。また、これらの部隊は分散しているため、攻撃するには多数の無人機が必要となる。結果として、ロシア軍の夏季攻勢の大半は、ウクライナ防衛線を突破しようとする小規模な兵士集団によるものだった。

これらの部隊は主に徒歩で行動したが、機動性向上のためにオートバイや全地形対応車を使用する事例もあった。殺人区域を越えると、部隊はウクライナ軍と直接交戦し、防衛線を破壊し、足場を築く可能性が生じる。ウクライナ軍が「肉の波」と呼ぶこれらの攻撃は限定的な成功を収めているが、その代償として極めて大きな犠牲を払っている。

この戦術は8月に成功を収め、ロシア軍がクチェリウヤルの一部を占領した。同軍は8月11日、ドネツィク州ポクロウシク北東の最前線からドブロピッリャに向けて地上攻撃を開始し、ウクライナ防衛線の弱点を突くことを狙った。この攻勢の一環として、ロシア軍部隊はウクライナ軍の陣地を突破し、クチェリウヤルと近郊のゾロティーコロジャシへ約10キロ進撃し、これらの村に一時的な足場を築いた。しかし、ロシア軍が村を完全に掌握したかどうかは不明であり、8月14日までにウクライナ軍は増援部隊を投入して前線を安定化させたと報告した。それでもなお、ロシア軍の一部隊はクチェリウヤルにとどまり、足場を守るべく抵抗を続けていた。

次ページ > クチェリウヤルで露呈したロシア軍の戦略的欠陥

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事