クチェリウヤルで露呈したロシア軍の戦略的欠陥
現在のロシアの戦術は、ウクライナ侵攻初期に採用された消耗戦に基づく方法を踏襲している。この戦略で、ロシアは正面攻撃で多数の兵士を犠牲にすることをいとわず、ウクライナの防衛網に突破口を作り出す。その突破口を後に利用し、より大きな戦果を得るためだ。これにより多大な犠牲が出るものの、ロシアは大規模な軍事力と継続的な動員を通じて死傷者を吸収している。
それにもかかわらず、この戦術は限定的な成果しか生み出しておらず、ロシアはそれを活用できていない。ロシア軍の攻撃がウクライナ軍から領土を奪取することに成功した場合、占領地を維持するために迅速に防御態勢へ移行せざるを得ない。こうした防御陣地は、小規模な歩兵部隊が防御しやすい集落に構築されることが多い。しかし、これらの陣地はウクライナ軍の殺人区域の後方に位置しており、攻撃後も殺人区域は機能し続ける。さらに、ウクライナ軍がロシア軍の攻撃地点を特定すると、無人機を集中させ、その地域に進入する増援部隊や補給線を攻撃することができる。
結果として、ロシア軍部隊は孤立した小規模な包囲網内で活動せざるを得なくなる。ロシアはこれらの部隊に十分な増援や補給を行うことができず、初期の戦果を拡大させることができない。前線各地からの報告によれば、多くの部隊で水や食料、弾薬などの重要物資が不足しているという。増援や補給の不足が長期化すると、部隊は戦闘能力を失い、士気が著しく低下する。クチェリウヤルでロシア軍が最終的に降伏した事例がこれを如実に示している。
クチェリウヤルの奪還が意味するもの
ウクライナ軍がこうした戦果を公表し続けていることを考えると、今後もクチェリウヤルと同様の多くの拠点も同軍に奪還される可能性が高い。ロシア軍は夏季攻勢で一定の進展を見せたものの、その成果を維持することは困難だろう。2023年にロシアの地雷原がウクライナの反攻を阻んだのと同様に、ウクライナ軍が無人機を用いて殺人区域を形成したことで、現在のロシア軍の進撃を効果的に阻止し、占領地の確保を妨げている。
広い意味では、クチェリウヤルの奪還は、ウクライナの無人機が戦場で他の弱点を補っていることを示すものだ。ウクライナ侵攻の初期には、トルコ製無人機「バイラクタルTB2」がロシア軍の最初の攻勢を阻止する上で重要な役割を果たしていた。その後、ウクライナ製のFPV無人機や光ファイバー無人機が広く活用されるようになり、ロシアの優位性が消し去られつつある。ウクライナが無人機戦術における優位性を維持できれば、ロシアの攻勢作戦は今後も限定的な成功しか収められないだろう。


