ネアンデルタール人も初期ホモ・サピエンスも、芸術を創造した。旧石器時代に描かれた洞窟壁画は、アフリカをはじめ欧州やアジア各地でも発見されており、赤や茶色、黒、黄色など、大地を思わせる落ち着いたアースカラーがその特徴だ。だが、青色はまったく使われてはいない。
歴史的に見ると、古代エジプト人が約5000年前に青色顔料(エジプシャンブルー、エジプト青)を生み出すまで、芸術を彩る色彩に青が用いられることはまずなかった。しかし、このほどドイツでの新発見により、エジプシャンブルーが発明される何千年も前に、それとは異なる青色顔料が欧州に存在していたことが明らかになった。洞窟芸術には使われなかっただけで、化粧に利用されていた可能性があるという。
ドイツ・フランクフルト近郊で1976~80年に実施された発掘調査で、後期旧石器時代の遺物が多数出土した。近年、この一帯の初期集落が形成された年代が約1万4000~1万3000年前と特定され、新たな調査の一環として40年前に発掘された遺物の再検証と詳細な分析が行われた。
その過程で、出土した凹面石器の内側に青色顔料とみられる微量の残留物が見つかった。他の出土品からは青色の残留物は検出されなかった。この微量の痕跡は、青色顔料がこれまで考えられていたよりはるかに昔から使われていたことを示唆している。
青色は自然界では見つけにくい色だ。研究チームは検出された青色残留物の由来を突き止めるべく、顕微鏡やX線、赤外線などさまざまな手法を用いて詳細に分析した。石器の窪面を拡大して観察したところ、さらに複数の微細な青色の斑点が存在していた。これは、かつて窪面全体に青色顔料が塗布されていた可能性を示しており、顔料を保管する容器として使用されていたのかもしれないという。
化学分析では、青色残留物に銅原子が多く含まれていることが判明。さらなる分析により、この物質はアズライト(藍銅鉱)と特定された。インディゴ(藍)やエジプシャンブルーなど他の青色顔料とはまったく異なる原料である。
アズライトは銅鉱石から生成される鉱物で、石器の発掘現場からそう遠くない地域の地中から自然に産出する。通常は地表近くにあるため、採取しやすかったはずだ。



