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2025.11.02 14:30

「絵の力」を信じ、ジャンルをつないで可能性を広げる(米山舞)

米山 舞|アニメーター、イラストレーター

米山 舞|アニメーター、イラストレーター

かつて西洋絵画は、デフォルメされた大胆な構図などを浮世絵から取り入れた。それから200年以上を経た2021年、再び日本の作品が注目を集める。ロンドンの「START ART FAIR2021」に出品された、16枚のイラストから成る集合作「00:00:00:00」(シーケンス)。それぞれ花に彩られた女性が描かれ、一枚の作品としても成立しているが、連作として見ると、ひとりの女性の成長物語を紡ぎ出す。作者の米山舞は、圧倒的な画力と、残像効果や人の心理描写といったアニメーションならではの技法を通して、イラスト表現の新たな可能性を打ち出した。

もともと米山は『新世紀エヴァンゲリオン』で知られる制作会社ガイナックスのアニメーターだった。「線をきれいに描く」ことから始め、動画マン時代は毎月300枚のノルマをこなす日々。当時は動画の単価が230円だったが、「視線の誘導で感情や心の動きを表現する技など高い技術を身につけられたのは、あの10年間の修業時代があればこそ」と、今も感謝する。

転機は30歳のころ。天野喜孝、いのまたむつみら先達の活躍に刺激を受け、アニメの枠を超え、イラストや立体作品、CM監督など、活動の幅を広げていく。それが、冒頭のシーケンスのような新機軸につながった。 

「音楽には、言葉や時間を超えて人々を結びつける強い力がある。同じように、絵にも大きな力があると信じています。物語がなくても、絵だけで引っ張っていけるものに挑戦したい」


よねやま・まい◎1988年、長野県生まれ。ガイナックスを経て独立。2019年よりクリエイティブスタジオ「SSS by applibot」所属。アニメーション、イラスト、映像、出版と活動分野は多岐にわたり、今年12月には都内にて大型個展を開催予定。

文=古賀寛明 撮影=帆足宗洋(AVGVST)

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